手話 と 手話通訳

手話通訳の取り組みと研究からの伝承と教訓を提起。苦しい時代を生き抜いたろうあ者の人々から学んだことを忘れることなく。みなさんの投稿をぜひお寄せください。みなさんのご意見と投稿で『手話と手話通訳』がつくられてきています。過去と現在を考え、未来をともに語り合いましょう。 Let's talk together.

広く取りいられていた身体表現と同じ 鳥 馬 鬣 おうむ とり 牛 かに あひる 京都の手話

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手話を知らない人も

       手話を学んでいる人もともに
  {新投稿}ー京都における手話研究1950年代以前の遺産と研究・提議 佐瀬駿介ー

 

馬。

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 この馬の表現は、手のひらを拡げて目尻の少し後ろにの甲をあてて手の甲を付けたまま手の平を後ろに回す。

 

 馬の鬣(たてがみ)の特徴を表し、馬とする手話である。

 

 このように動物や物の特徴の一部を表し、全体を表現する手話に多くの知恵と表現力を見いだし感動したことは忘れられない。

 

   おうむ。鸚鵡。

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くちばしで「おうむ」を表現しているが、人差し指を曲げて、他の指の曲がりぐあいを表現しておうむのくちばしの特徴を表現する手話。

 

  鳥・とり。
 小鳥

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 おうむ、と比べて「くちばし」を人差し指と親指をつけたり離したりして、一般的な鳥を表現する。


牛。

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 象形文字の成り立ちからして牛の漢字は、角で表されている。

 

 馬のたてがみに対する角で表現されている手話。

 

あひる。

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 ヒルの唇と羽をバタバタさせている様子を前屈みになりながら表現する手話。

 

 ヒルをまるごと表現させてい。

 

 時には、このうえにアヒルの歩き方までつけ加えられることがあった。

 

かに。蟹。

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 かにの「はさみ」を表し、左右に身体を動かして「かに」の横歩きを表現する手話。

 

 ろうあ者だけでなく広く使われていた表現であるが、手話と限定しなくてもこれらのような表現形態は多い。

 

 広く使われていた身体で表現する物、動物、感情は、共通して多くあることを忘れてはならない。

 

 

格子 管 犬 イカ スルメ 櫻 石 固い いのしし 魚 桜  猿 京都の手話

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手話を知らない人も

             手話を学んでいる人もともに
  {新投稿}ー京都における手話研究1950年代以前の遺産と研究・提議 佐瀬駿介ー

 

格子。

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 横と縦に組合せられた木組みで格子を現す。

 

 京都の民家では、どこででも観ることが出来た格子。ガラスなどがなかった時代の京都で住む建築状の工夫である格子。

 

 今は、どんどん見られなくなった。


管。
くだ ホース

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 管という手話。

 

 管は管でも細い表現なののでガス管、水道管やホースなどで使われた。

 

  人差し指と親指の輪の大きさでさまざまな管を表現したが、土管となるとまったく別の手話がある。

 

犬。

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 手のひらで耳を表し、少し手のひらを前に曲げることで犬を表現する。

 

 犬でもいろいろな種類があるが、その場合は特に顔の表情で表されたりした。

 

イカ。烏賊。
スルメ

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 手のひらを顎にあてて細かく手指を互い違いに上下に動かすことで、イカが泳ぐ様子を表す。


石。
固い
 

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 顎を拳で覆うことで石、又は、拳を顎にあてることで固い。


いのしし。猪

 

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 いのししの牙を人差し指で少し曲げて表し、背を曲げていのししの動きを想像させる手話。


魚。

 

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 手のひらを右から左や斜めや前に魚が泳ぐ様子を動きで表わす。

 

 魚の泳ぎを充分理解していないと、手のひらのくねくねとした動きは表現出来ない。

 

 魚という手話一つでもって、手話の使い手の観察力が問われる。

 

  猿。

 

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 猿は、いろいろな表現があるが、この場合は、腕を掻いて猿という手話にしている。

 

 京都ろう学校は、日本画専科があっただけに花や動物、自然などの手話表現は細やかで、しばしば「そんな魚なんかいない」「そんな猿は、猿でない」と手話表現をめぐってろうあ者の中で手話論議になったことを見てきた。

 

桜。

 

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 この手話について、伊東雋祐氏は、花見のように解説していたがそうではない。

 

 桜は、櫻とされたため貝を表現してそれを組み合わせて、最後に櫻の花が咲くとしているのである。

 

手のひらを少し膨らませて上下の手のひらを平らに合わせて貝、と表現する場合があり、それを縦むけにすると花の蕾の手話になる。

 

 その蕾を手のひらの開きぐあいで、花が咲く様子を表す。

 

 満開になると縦にした手のひらを大きく開く。

 

 睡蓮の花の場合は、ゆっくりとねじるようにして膨らませた手のひらを徐々に開いていく。

 

 漢字を取り入れつつ花を表現するところに手話表現の見事さがある。

 

 

 目線が上にあることで表現された桜である。

 

 なお、京都ではろうあ者はよく嵐山のことを桜の下で花見の宴を開いた。

 

だから、嵐山の地名は、手拍子と櫻の手話で表した。

 

 この時は、手拍子と櫻を合わせて手話表現されたがそれは、目線より下で表現された。

 

  このあたりから「1954年手話冊子」の記録を伊東雋祐氏も明石欣造さんも「うろ覚え」になり、しばしば撮影は中断した。

 

箱 それ なにか 黒 沢(沢山) 監督 創る 制作 製造 七 人 侍(チャンバラ・刀を合わせ合う) 非常に 良い いい蚊 蚊をペシャンと 断る 防ぐ 予防する 退ける 長方形 蚊帳 京都の手話

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            手話を学んでいる人もともに
  {新投稿}ー京都における手話研究1950年代以前の遺産と研究・提議 佐瀬駿介ー

 

  箱。

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 上蓋と下蓋を合わせて表現しているので、比較的小さな箱。弁当箱(竹や籐などで編まれた)のようなもをであろう。

 

 曲げた指の組合せが、戦前の弁当箱などのようなもをの感じを出している。当然、柳行李になると手話は替わった表現になる。 

 

それ なにか 黒 沢(沢山) 監督 創る 制作 製造 七 人 侍(チャンバラ・刀を合わせ合う)非常に 良い いい

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  それはなにかというと、黒澤監督の制作した七人の侍は、ひじょうによかった。

 

 と少し長い手話が続くが、ここでは、

 

=炭
=沢山の 沢を取り入れている。
監督=責任・役職の長
創る=物をつくるで表現。
=ここでは大阪市立聾唖学校の大曽根源助らがつくった指文字の七
=空文字 人 空に 「人」と書く。
=武士の表現ではなく、この映画で野武士が出てきて当時の時代劇のような刀を合わせて斬り合うという場面は少なかったので、人差し指を刀に見立ててぶっけ合う=チャンバラ=侍
ひじょうに・大変=人差し指と親指を水平に合わせて親指を横に動かす=だんだん、とか。すごく、とかの意味も合わせる。(この手話の動きは微妙で難しい)
よい・よかった=鼻の上に握り拳 悪いは、人差し指で鼻を楕円形に叩くしぐさ 握り拳を前にして上昇させると 自慢・天狗・いばる

 

 このように映画の内容や相手に伝える相手を考えて変幻・自由に手話が使われた。

 

蚊。
蚊をペシャンと。

断る。
防ぐ、予防する、退ける

縦と横の箱状の物

以上を合わせて「蚊帳」(かや・かちょう)

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 蚊帳の手話が、相手に伝われば繰り返すこともなく、箱状を手話ですると蚊帳になる。

 

 相手に伝われば、省略して表現出来るのも手話の特徴である。

 

手話 でわかる ろうあ者の生きた時代 歴史 を手話として視覚的表現しながらも新しい知識を取り込んだ 手話 ラジオ ラジオ受信機 レコード 蓄音器 染め物 そめる 京都の手話

手話を知らない人も

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ラジオ。
ラジオ受信機

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 聞きたいがために憧れるラジオ。

 

 ラッパ状のスピーカーから流れる音声を聞こえる人に必死に聞いたと言うろうあ者に何度もあった。

 

 その後、ラジオは、小さなダイヤル( 回転式目盛調節器)を回す手話に代わっていく。

 

  1945年(昭和20年)8月15日正午の玉音放送(ぎょくおんほうそう)は、大変なことが放送されていると解っていても、聞こえる人に聞いても「なにを言っているのかさっぱり解らない」「戦争やめる」「日本が戦争に負けたと言っているのでは」などの話は、ろうあ者から繰り返し聞かされた。

 

 その話を知って喜んだろうあ者のほうがはるかに多かったという。

 

 このラジオ、レコード、の手話は、その時代、時代の物を映し出すというか、切り取っているのでろうあ者が生きた時代がよく解る。

 

 京都では、日本最初の電気鉄道として開業され歴史から、電車、路面電車、市電の手話は、明治、大正、昭和を生きたろうあ者の生活を反映している。

 

 その手話を見ただけで、ろうあ者の育った時代が解ったが、今は市電もない。


レコード。
蓄音器

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  これもろうあ者が聴きたい機械だった。戦前の聾唖学校には生徒に聞かせる聴覚器機があったらしいが、円盤状のレコード盤がくるくる回り、針が上下しながら回転していく様子はろうあ者の興味を強く引いた。

 

  人差し指は針。

 

 手のひらは、レコード盤。

 

  レコード盤が回るのではなく、針を円状に回してレコードの手話としている。

 

 音を聞く犬、ビクターレコードのシンボルと対比して音が表現されていない手話。

 

染め物。
染める

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 布を持って染める重労働。染めの仕事は一度ではなく多くの工程があり、さまざまな小規模作業所でろうあ者が働いていた。

 

この手話の場合は、布を下から上に引き上げて染める、としている。いろいろな「染め」の手話はある。

 

 京都の着物の美しさを褒め称える人の話を聞くたびにろうあ者の姿を思い出す。

 

 友禅流しを鴨川で、とは遠い昔の話になってしまった。

 

 

生活、仕事 から創りだされた 手話 やかん 急須 お茶 を使い分ける手話 ボタン ろうそく 織物 織る 京都 の 手話

 

 手話を知らない人も

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  {新投稿}ー京都における手話研究1950年代以前の遺産と研究・提議 佐瀬駿介ー

 

やかん。
急須・お茶

 

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 やかんというよりこの場合は、急須という手話として表現されているように思える。というのは、最後に上にあげて急須のそそぎ口と取っ手を暗示しているからである。急須と言っても知らない人が多いが、ぜひ、急須を手に取ってこの味わい深い手話を学んで欲しい。

 

 ともかくお茶を飲む意味で、転じてお茶という意味も含まれた。生活に根ざした手話は、じつに多様である。それぞれの地域の特徴も踏まえて知っていただくと手話の奥深い表現を知る事が出来る。

 これこそ、本当の上級者の到達点であるが、表現は無限にありすべてを知り尽くす事は出来ない。だからこそ手話はコミュニケーションの手段としてろう者の中で生きづいてきた。

 

 1960年代になってベトナム戦争が激しさを増し、京都ではベトナムの指文字「へ」とお茶を掛け合わせて、写真中間の手話を横に動かすか、振ることでベトナムと手話で表した。

 

 社会情勢を機敏にとりいれた知恵に驚かされる。

 

ボタン。

 

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 この場合は、学生服のボタンであろうか、上から下へと丸いボタンが並ぶ様子を表している。

 

ろうそく。

 

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 握り拳をロウに見立ててそこから燃えあがる炎を現している。

 

 電気やランプのなかった時代から先人によって伝えられてきた手話であることが解る。

 

織物。
織り。織る

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 縦糸と横糸の組合せで織物を表現している。

 

 多くのろうあ者が、この織物の仕事に携わってきた。

 

 機械化されて、機の音の騒音がろうあ者には聞こえないから「適切な職業」だとされたり、言われたりしてきた。

 

 しかし、織物に携わる人々の低賃金で過酷な労働。特に納期に間に合わせるために睡眠どころでなかった悲惨な労働は、語り継がれて言って欲しいと思う。

 

 地場産業と言われた西陣、丹後の織物に多くのろうあ者が携わっていた。

 

 

部屋 間取り はかり ばね秤 袋 膨らませる ふた・蓋 畳 京都 の 手話

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 手話を知らない人も

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部屋。

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 両手で部屋の四方を表現する手話。

 

 この両手の広がりで部屋の大きさを表現した。

 

 ろうあ者は、間借りすることが断られて、哀しい思いをしたという時にこの「部屋」がよく使われた。

 

 手の広がりはなく、小さく表現されたことが忘れられない。

 

 ましてや結婚して「新居」を借りる、ということは哀しみの連続だった。

 

 ろうあ者も哀しい思いをしたし、手話通訳者も泣いた想い出は数え切れない。

 

 はかり。ばね秤。

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 針の揺れで重さが解る。でもバネばかりの場合は、針が揺れる。そのことによる重さと値段の差。

 

 注意深く、細かく魅入る表情にろうあ者の生活が滲み出ている。

 

袋。膨らませる。

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 ビニール袋がなかった時代。紙袋がペタンコになっているのを膨らませて物が入れられていた。

 

ふた・蓋

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 ネジ式の蓋がなかった時代、物を入れてきちんと蓋をしないとカビたり、腐ったり、こぼれたりした。

 

 きちんとしっかり、蓋をする動作からきた手話。


畳。

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 畳屋さんが、畳を縫い合わせる動作から表現された手話。

 

 手の甲は、畳床、それに大きな針で縫い合わせて縫い目を締め上げる。

 

 畳職人の技を表現。

 

着物 着物を着る 戸 戸を開ける 締める 閉ざす 開く ズボン ズボンをはく  会計 計算 計算をする 算盤をはじく 下駄 京都 の 手話

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手話を知らない人も

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  {新投稿}ー京都における手話研究1950年代以前の遺産と研究・提議 佐瀬駿介ー


着物。

 着物を着る

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  着物の前合わせ、によって最後の写真の手の位置が異なってくる。左合わせ、右合わせ、などの表現であるが着物を男女ともに着ていたからこそ出来る手話である。

 

 着物を着る時の動作が表現されている。単に肩のラインで交差させていないところを見てほしい。

 

 少しの違いが、大きな意味を持っている手話である。

 

戸。
戸を開ける 締める 閉ざす 開く

 

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 今日のような一方だけ閉める戸ではなく、左右を合わせて閂(かんぬき)をする。

 

 この動きを逆にすると「戸を開ける」ということになる。

 

 ここから、閉める、開ける、締める、閉ざす、開けるとなり、「こころを閉ざして」「こころを開いて」などに発展的に使われた手話である。


ズボン。

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 ズボンに足を真っ直ぐに入れてはく。

 

 スーッとはく心地よさを表現している。なお、袴、モンペなどは別な手話がある。

 

会計。

 計算 計算をする 算盤をはじく

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 ろうあ協会でも会計担当は重要な役員であった。

 

 少ないお金の出し入れで、ろうあ協会を維持していくためには計算して帳簿を付けるろうあ者は少なかった。

 

 ともかく、会計は、算盤をはじく、手話である。

 

 従って、計算する、算盤をはじく、時には、人差し指などで横に動かし、算盤を元に戻すことから清算する、もう一度やり直す、などの意味でも手話が使われた。

 

 明石欣造さんの手話では、五つ玉算盤を想起させる。

 

下駄。

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  人の足を載せる部分を台、台の下に付けるのが歯。

 

 その歯の部分を表現した手話。

 

 開いた手の動きから二つの歯が高く、高下駄を表現している。女性の場合は、歯の大きさを小さくしたり、鼻緒で表現したりした。

 

 京を高下駄を響かせながら歩く旧制高校の学生への憧れからよく高下駄が履かれた。

 

 現在では、調理場用として使われいると京都の下駄屋さんが言っていたが、時代を感じさせる手話である。

 

なお、京都の舞妓さんの履物のぽっくり、こっぽり、などは履き物の独特の形で表されていた。