手話 と 手話通訳

手話通訳の取り組みと研究からの伝承と教訓を提起。苦しい時代を生き抜いたろうあ者の人々から学んだことを忘れることなく。みなさんの投稿をぜひお寄せください。みなさんのご意見と投稿で『手話と手話通訳』がつくられてきています。過去と現在を考え、未来をともに語り合いましょう。 Let's talk together.

映画が大好き(好きで好きで) 邦画字幕がなくても愛せた訳 手話で伝え合った映画の感想 

f:id:sakukorox:20170803190347j:plain

手話を知らない人も

    手話を学んでいる人もともに
  {新投稿}ー京都における手話研究1950年代以前の遺産と研究・提議 佐瀬駿介ー

 

  明石欣造さんからも同世代のろうあ者からも映画の話をよく聞いた、というか手話で話された。

 

 それも手話を学ぶ上で大いに活かされた。

 

 だが、しばしばなぜこんなにも映画の内容に詳しいのか、と疑問に思うことがあった。

 

 洋画=西洋映画は字幕があるが、邦画=日本映画もとても詳しかった。今だに分からないのは、擬音を説明されたことである。

 

 西部劇の銃の音やアメリカインデアンの叫びなども字幕には書かれていないが、独特の擬音表現された。

 

 邦画に字幕をと言うことで、ろうあ者が特に観たいという映画「ベトナム」を独自にオーバヘッドプロジェクターを使って上映することが出来たのは、1969年のことであった。その苦労と多くの人々の協力は忘れられない。

 

 特に映写技術、映画館ではない会場、機器を貸し出してくれた方々の笑顔。観客の大きな拍手は脳裏に焼き付いている。

 

※ 以下の写真の脚注の手話の文字は伊東雋祐氏が書いたが、掲載当時から疑問を持っていたので明石欣造さんの手話に添って文字に置き換えてみる。
  なお、明らかに間違った注釈があるのでそれは文中で明かにしたい。

 

 

f:id:sakukorox:20170803190450j:plain

  

f:id:sakukorox:20170803190635j:plain

  

  私は映画が大好き(好きで好きで)です。特に映画になると我を忘れて夢中になります。
 外国映画の時は、字幕が流れるので観ていて分かるのですが、日本映画は観ていても分からないので困るし、理解が出来ない。

 

お金がなくなる すっからかん 避ける 逃げる 逃走 逃亡 適当に ~的 ピッタリ 合う 塩梅 京都の手話

f:id:sakukorox:20170803182433j:plain

手話を知らない人も

           手話を学んでいる人もともに
  {新投稿}ー京都における手話研究1950年代以前の遺産と研究・提議 佐瀬駿介ー


  お金がなくなる。
 すっからかん。

f:id:sakukorox:20170803182539j:plain


 
   右手でお金の手話をして、それが両平手ですりあわせることで、手元のお金がなくなったという手話。

 

 株、商売や競馬、競輪、賭博などですべての金を失った場合などでよく使われた手話。

 

 怠ける。
サボる。

f:id:sakukorox:20170803182616j:plain

 

   漢字の怠けるの、ム、口に心のハだけを口の上に組み合わせた手話であるが、ぼんやりしている、鼻水垂らしてなにも考えていないなどの意味からの手話。

 

逃げる。
逃走。
逃亡。
避ける。

f:id:sakukorox:20170803182651j:plain

 

身体を右から左に動かして、逃げようとする姿を示して逃げるの手話。

 

 あ、やばいと逃げる。

(話から)にげるなど。

 

適当に。
~的。
ピッタリ。
合う。
塩梅。

f:id:sakukorox:20170803182724j:plain

 

 左右の人差し指をそれぞれ指先に合わせて、合っている、適当に、「紳士」などの意味を持った手話。

 

 写真は、左右入れ替わっているので、右側から見ていただきたい。

 

 

 

手話で言いたい機微に触れる 京都の手話

f:id:sakukorox:20170802181030j:plain

手話を知らない人も

     手話を学んでいる人もともに
  {新投稿}ー京都における手話研究1950年代以前の遺産と研究・提議 佐瀬駿介ー

 

次の写真を手話の語彙だけで羅列すると

 

  新聞(最初の写真は京都などでの手話) 二つ ある(存在)一つ 東京(東) 広がった (かなり)昔  (人を)  呼び集め 左手に持ち(紙・新聞紙)    頭 布(和手拭い)置いて     左手に持った(紙・新聞紙) を 指さして  これこれ (と言う・買って、と言う) (これが)  切っ掛け(はじまり) ここから(から) だから(関係)正しい わからない   左手に持ち(紙・新聞紙)    頭 布(和手拭い)置いて

 

となる。

 

 手話通訳すると、

 

 新聞という手話には二つある。東京を中心に広がった(新聞という手話で)昔々人を呼び寄せて、これこれしかじかと新聞を指さして新聞が売られていた。この動きを手話で「新聞」という手話になったが、どちらが正しいか分からない。新聞、新聞‥‥‥

 

 と通訳できるが、最後の部分で最初の京都などの新聞の手話ではなく、東京を中心に広がった新聞の手話の方向を見て新聞を繰り返していることを読み解けば、

 

  どちらが正しいか分からない、東京を中心に新聞、新聞って手話しているけれどもねぇ‥‥‥ 

 

とも手話通訳する必要があるのではないだろうか。

f:id:sakukorox:20170802181355j:plain

f:id:sakukorox:20170802181508j:plain

 

この新聞の手話を新聞配達する動作を示しているとする意見があるが明治時代にはじまった新聞は、まだ店頭販売ではなく街頭販売だった。

 

 明石欣造さんが、東京を中心に広まったと説明する「新聞の手話」は、江戸時代の「瓦版売り」を彷彿とさせるものでそれは明治時代にも継承される。

 

 京都の「新聞の手話」は、右手の平を水平にして紙・新聞を表し、左手をぱっと広げている手話(広がる、知らせるなどなど)から、新聞が情報を広めるものという意味で示されていて、今では想像できない時代の新聞の広め方や販売方法である。

 

 明治時代頃の社会の動きを見事に捉える手話として大切にしたい。

 

 

 

 私は、手話通訳は、ろうあ者と日常的にに接してその人と心打ち解け合うことが出来る人でないと、そのろうあ者の手話で言いたい機微に触れることは困難である場合があることを想定しなければならないと思い続けてきた。

 

 手話が「どちらが正しいか分からない」といいながら  明石欣造さんの表情は、京都などの新聞のほうがいいぞ、と読み取れる。読み取らなければならないと言える。

 

 写真の下線部分の文字は、伊東雋祐氏が書いているが、必ずしも適切ではなく伊東雋祐氏も「おまえに任すわ。ようわからんようにになってきた」と吐露し始めた頃の写真である。

 

 この連続写真は、 一コマ一コマをカメラマンの豆塚猛氏と確認しながら手話や手話表現の深層を確認したもので、125分の1秒の瞬間の写真の連続撮影である。

 

 その一瞬とも言えない程の短い瞬間に籠められた想いや表現。

 

 手話には、多義多彩な意味合いが無限に織り込まれている。

 

扇動する あおり立てる 準備する 整える 整理する 手術する 証明する 認める 印をつく 辛抱する 堪える がまんする 示す この通り 京都の手話

f:id:sakukorox:20170801193404j:plain

手話を知らない人も

     手話を学んでいる人もともに
  {新投稿}ー京都における手話研究1950年代以前の遺産と研究・提議 佐瀬駿介ー


準備する。
整える。
整理する。

f:id:sakukorox:20170801193520j:plain

 

  散らかった物を「整え」おくこと動作と合わせて準備するの手話。

 

 整える、整理するの意味もある。

 

 心の準備をするの意味も。

 

手術する。

f:id:sakukorox:20170801193601j:plain

 

 メスを持って切る動作から手術するの手話。

 

証明する。
認める。
印をつく。

f:id:sakukorox:20170801193647j:plain

 

 印鑑をつく時、朱肉がなかった時に印鑑に息を吹きかけて印鑑をつくと残っていた朱肉が出て印をついたことになる動作から、印鑑をつく=認める=証明するの手話。

 

  証明の手続きを示したもの。

 

 左右の拳を向けあって曲げて、双方が頷く手話もあるが、これは認めるの手話で印鑑をつくと区別された。

 

辛抱する。
堪える。
がまんする。

f:id:sakukorox:20170801193744j:plain

 

  自分の気持ち=腹に溜まってきたものを自分で押さえて押しとどめるという意味から手話表現されている。

 

示す。
この通り。

f:id:sakukorox:20170801193828j:plain

 

 示すの意味は、他の人にわかるように、指さしたり実際に出して見せることから手話表現されている。

 

 人差し指を手のひらに置いて、高々と指さしたものを表す。

 


  扇動する。
あおり立てる。

f:id:sakukorox:20170801193926j:plain

 

 人の気持をあおり(=煽)立てて、ある行動を起こすようにしむけることが扇動の意味。

 

 人(親指)を団扇であおぐ(扇ぐ)。

 

(火をおこす時の動作で、団扇であおぐとよく火が燃える。)=手のひらをゆらゆら動かすで、扇動の手話。

 

  扇動の漢字そのものを表現した手話と言えるだろう。

 

印象と言うよりも感動 参加 参加する 入る 指導する よく喋る あちこちで喋る 叱る だめ めんめ 京都の手話

f:id:sakukorox:20170801184430j:plain

手話を知らない人も

              手話を学んでいる人もともに
  {新投稿}ー京都における手話研究1950年代以前の遺産と研究・提議 佐瀬駿介ー

 

手話の表現の意味合いを調べれば調べるほど深く広い意味がある。

 

 それを、断定的に書くのは簡単であるがそのことはろうあ者の創り上げてきた手話へのある意味「冒涜」ではないかと思う。

 

  さいわい私は、1960年以前の京都のろうあ者数百人と手話で会話をして、手話を学んだので強烈な印象が残っている。

 

 印象と言うよりも感動だろう。

 

 このことをこのように手話で表せるのか、という人間賛歌の共感と人間が持つ無限のへの賞賛と勇気でもあった。

 

 その一部を今紹介し続けているが、ぜひみなさんで参考にして「手話の表現の意味合いを調べれば調べるほど深く広い意味」をさらに上書きしていただければうれしい。


参加。
参加する。
入る。

 

f:id:sakukorox:20170801185018j:plain

 

 漢字の参は、  まじわって、かかわりあう、加わる、あずかる、の意味を踏まえて人差し指を右手の手のひらに∩状に動かして参加するの手話。

 

 右手の手のひらを少し丸めと人々のいるところに参加するということで集会に「参加」の手話。


指導する。

 

f:id:sakukorox:20170801185109j:plain

 

 これはすでに他の処で述べた。

 

よく喋る。
あちこちで喋る。

f:id:sakukorox:20170801185153j:plain

 

 

 喋るは漢字で口に葉と書くことからもあって、口から手を広げて小刻みに動かして喋るの手話。

 

 右向いて、左向いて喋っているので「あちこちで喋る」「よく喋る」という手話表現になる。


叱る。
だめ。
めんめ。

 

f:id:sakukorox:20170801185236j:plain

 

 子どもを叱る時、親指を立てて子どもに「そんなことをしてはいけませんよ」という動作を手話で表したもの。

 

 京都などでは「めんめ」と言った。

 

 

 

受け入れずはねつける 断る はねつける 倒れる ころぶ 殺す 腰かける 座る 答える 回答する 探す 探し回る 京都の手話

f:id:sakukorox:20170730164429j:plain

手話を知らない人も

             手話を学んでいる人もともに
  {新投稿}ー京都における手話研究1950年代以前の遺産と研究・提議 佐瀬駿介ー


断る。
はねつける。

f:id:sakukorox:20170730164536j:plain

 

 手のひらに置いた物を跳ね飛ばす、取り除く動作の手話。

 

 受け入れずはねつける、で断るとなるが、まったく受け入れない拒絶する手話は、他にある。

 

倒れる。

ころぶ。

f:id:sakukorox:20170730164917j:plain

二本指を動かし歩く動作を180度ひっくり返して倒れる、ころぶの手話。

 

 ころぶ場合は、二本の指の倒し方で表現する。

 

 例えば、溝にはまって「ころんだ」。

 

殺す

f:id:sakukorox:20170730165016j:plain

 

 この場合は、ドス(短刀=人差し指)で刺し通す、で殺すの手話。


腰かける。
座る。

f:id:sakukorox:20170730165109j:plain

 人差し指と中指を曲げて足を曲げた動作の手話。同じく人差し指と中指を真っ直ぐにして、長椅子、ベンチなどをイメージしてそこに曲げた人差し指と中指を置く。

 

 人が、腰かける動作を表した手話。


答える。
回答する。

f:id:sakukorox:20170730165229j:plain

 

 答の漢字は三角形の形態があるので両手で△をつくって、前に出して答えるという手話。

 

探す。
探し回る。

f:id:sakukorox:20170730165313j:plain

 

 親指と人差し指で円をつくり=眼 をくるくると円状に回して探すの手話。

 

 あちこち探す眼の動きを表しているが、数回繰り返すと、探し回るという手話になる。

 

右手と左手を微妙に上下させて話す けんかする 殴り合い ケンカ  検査する 検査 交渉する 掛け合う 京都の手話

f:id:sakukorox:20170730160612j:plain

手話を知らない人も

                 手話を学んでいる人もともに
  {新投稿}ー京都における手話研究1950年代以前の遺産と研究・提議 佐瀬駿介ー

 

手話の多くは、漢字に由来することが多いことを述べてきた。(齢などの歯+令)

 

  漢字の表意、表音を巧みに表現の中で取り入れた手話なのだが、簡略化された漢字になれてしまっている現代では、そのことを知らないで手話を評論することが多い。

 

 漢字の表意、表音を巧みに表現の中で取り入れた手話を知れば、知るほどろうあ者の

知恵に感銘を受けるだろう。

 

 詳しく書くと、ひとつ一つが長文になるので以下簡略化して述べる。


けんかする。
  殴り合い。
 喧嘩。

f:id:sakukorox:20170730160744j:plain

 

 左右の拳を激しくぶつけてけんかの状況を手話表現。

 

 拳で殴り合うからかなり激しいけんかだろう。

 

 漢字の喧嘩の意味も込められている。

 

検査する。
検査。

f:id:sakukorox:20170730160827j:plain

 

 検査の意味から、両眼を左右によく見て調べるー検査の手話。

 

交渉する。
掛け合う。

f:id:sakukorox:20170730160907j:plain


  相手と「掛け合う様子」を手話表現。

 

 右手と左手を微妙に上下させて話す様子を再現し。双方がいろいろと対話していることを表現した手話。