手話 と 手話通訳

京都の手話通訳者の取り組みと研究の中からの伝承と教訓をみなさまに提起します。戦前戦後の苦しい時代を生き抜いたろうあ者の人々から学んだことを決して忘れることはなく。

手話通訳とはなにか 手話通訳者の労働とはなにか

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手話や手話表現にこだわる傾向の克服
 
  現代の手話通訳を考える場合、手話や表現にこだわり、手話通訳そのものを考えない傾向がある。

 

 現に手話通訳という名称で発行されているさまざまなテキストのほとんどは手話の紹介であったり、手話を並列的に配置しているに過ぎず、「手話で通訳する」という本来の意味での「手話通訳」という基本要素がないがしろにされている。

 

 これらの傾向は、手話通訳が音声と手話を媒介とする「無限の領域」の中から確定的に必要な「表現」を取捨選択し、表現し、手話を媒介してコミュニケーションを成立させるという手話通訳の専門性を理解していないことを示している。

 

     重要な要素が考慮されていない 「伝達理解」という

 

 近年まで手話通訳の仕事(以下労働)は、まったく研究・検討されてこなかったのではないかとさえ考えられる。

 

 なぜなら手話通訳として書かれたり、報告されたものはあったが、その内容のほとんどは、「手話で通訳する」という「通訳」という解明や論述がされてはいないからである。

 

 あえて言うなら、「ただ自己流のマニュアル」や「手話テキストに書かれている手話の羅列」を示しているのが特異な特徴であるとも思われる。

 

 そこには、「伝達理解」という重要な要素が考慮されているとは思えない。

 

    手話通訳とはなにか

 手話通訳者の労働とはなにか

 

 1980年代から手話通訳者の職業病が解明され、手話通訳者の人間的構造や人間的特質が手話通訳の労働上考慮されていないことが明らかにされた。

 

 このことは、手話通訳とはなにか、手話通訳者の労働とはなにかを明らかにしなければならないことを一層求める結果になった。

 

      人間相互の

コミュニケーションとしての手話通訳

 

 人間を媒介とする手話通訳には、人間相互のコミュニケーションが前提である。

 

 しかし、過去この領域に立ち入って手話通訳のあり方を充分解明する人々は日本では存在しなかったため手話通訳者の職業病はより深刻化した。

 

 滋賀医科大学の垰田和史準教授は、手話通訳者の職業病という領域を研究・解明する中から「手話通訳内容や手話通訳者の労働」に重大な警告と問題提起を行い、生理学的基礎を踏まえた手話通訳の改善の必要性を説いた。

 

 例えば、手話通訳者の労働には「中枢神経系の高度な機能が必要」とされることを「手話通訳者の健康管理マニュアル」(文理閣)でも明らかにしている。

 

   手話通訳をするうえでの

  特性が医学的に解明されてきた

 

 「手話の語順と話語の語順は異なっているため、機械的な変換では適切な表現が構成できません。

 

 手話表現の正しい意味やニュアンスを理解し、適切な話語に対応させる必要があります。


 表現されている手話や表現しようとする手話を、適切に解釈したり選択したりするためには、言葉の背景にある聴覚障害者の生活や文化を十分理解する必要があります。
 つまり、手話通訳に伴う脳の使い方が、質的にも高度であり、負担も大きいということです。」

 

と手話通訳上の「特性」を医学的考察から明らかにしている。

 

     手話通訳の本質的研究が

                 ほとんどされていない

 

 しかし、悲劇的なことに、手話に関わる人々や手話通訳者の少なくない人々は、垰田和史準教授の重大な警告と問題提起を単なる健康上の一側面と捉え手話通訳や手話通訳労働に関わる重大事項として捉えはしなかった。

 

 垰田和史準教授の提起を受けて手話通訳関係者の領域で、「手話の語順と話語の語順は異なっているため、機械的な変換では適切な表現が構成できない」という手話通訳が持つ本質的特性などについて検討・研究されなかった。

 

 そのため手話通訳者の健康被害は激減することはなくより潜在化し続けただけではなく、重大な警告と問題提起を検証し、手話通訳の専門性がより科学的に解明されずに現在に至っている。

 

  日本では手話通訳や手話通訳者の存在に広がりを見せてきたが、その反面手話通訳の本質的研究がほとんどされてこないという問題を内包してきたままである。

 

     手話通訳労働の特質な

               どが熟考されていない

 

手話通訳士協会ホームページには、「手話通訳士の仕事」として、

 

 手話通訳者は、相互の意思伝達が困難な人々の間のコミュニケーションを仲介する行為を行い、実際の通訳場面では両者の意見や立場を知り得る唯一の人として重要な役割を担っていることから、手話通訳者には、公正な態度、さまざまなことを理解する知識および高い通訳技術が求められています。手話通訳士試験が求めている、手話通訳者の役割と通訳技術および通訳者としても身につけておくべき一般教養を評価することは、このことを裏付けているといえます。


   手話通訳士協会は、手話通訳を「コミュニケーションを仲介する行為」として「手話通訳者には、公正な態度、さまざまなことを理解する知識および高い通訳技術が求められて」いる、としている。

 

 ここには、垰田和史準教授の指摘する「手話通訳は、機械的な変換では適切な表現が構成できないこと」「(手話)を適切に解釈したり選択したりするためには、言葉の背景にある聴覚障害者の生活や文化を十分理解する必要」がある、とする手話通訳労働の特質などが熟考されているとは考えにくい。

 

    近年の手話通訳は

手話通訳の本道をすすんでいるのだろうか

 

 はたして、手話通訳は、「互の意思伝達が困難な人々の間のコミュニケーションを仲介する行為」とする「仲介」という言葉だけで手話通訳を表現し尽くしていいのだろうか。

 

 そこからさまざまな問題が派生していないだろうか。

 

 いやそれ以前に近年の手話通訳は手話通訳の本道をすすんでいるのだろうか、などなどの疑問が沸々と沸き上がるのを消すことができなかった。

 

 そのため私たちはグループ検討を行うことにした。

 

 しかし、この課題は容易に解明できるものではない。