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手話と手話通訳

京都の手話通訳者の取り組みと研究の中からの伝承と教訓をみなさまに提起します。戦前戦後の苦しい時代を生き抜いたろうあ者の人々から学んだことを決して忘れることはなく。

厚生省が「委託」形式をとりながら、内実は厚生省の意図する福祉全般の「改革」を打ち出す

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  手話通訳制度調査検討委員会報告書(1985年5月20日)      の問題点とその後の手話通訳制度に与えた影響 (8)

 

 第5の問題点は、厚生省が全日本ろうあ連盟に「委託」した検討の中心に関係行政機関として、元厚生省の役人が参画していることがあげられる。
 検討を委託したのは、当該団体を配慮したとする形態をとりつつも、内実は元厚生省役人が「采配」を振るう委員会となり、手話通訳に対して専門知識はもちろん何の経験も持ち合わせていない厚生省の委員が検討委員長となったのである。

 そこには、厚生省が「委託」形式をとりながら、内実は厚生省の意図する福祉全般の「改革」を打ち出していこうという方向があった。最初から手話通訳者は、「蚊帳の外」に置かれていたのである。

 

  「士」という概念について当時の全日本ろうあ連盟関係者で

     説明することが出来るものは誰もいなかった

 

 このことで一例をあげておくと、検討委員会で出されてきた「手話通訳士」という「士」という概念について当時の全日本ろうあ連盟関係者で説明することが出来るものは誰もいなかった。
 現代では介護福祉士などの用語が通常に使われているが、検討委員会報告以降、福祉分野で打ち出されてきた「士」という用語であることは忘れてはならないことである。

 

    福祉の大改悪という大がかりな政策のうちのひとつとして

 

 今日となれば、厚生省が福祉分野の「資格」制度を作ることを目論んでいて、その「切っ掛け」を作ったのが「手話通訳士」という言葉でもあったと言えるが、多くの手話通訳者は手話通訳制度という言葉に翻弄されてしまい、その内実に迫ることが出来ないでいたのである。

 福祉の大改悪という大がかりな政策のうちの一つとして、手話通訳制度調査検討委員会がすすめられていたのである。


 手話通訳制度調査検討委員会報告書

 第一部 日本のろうあ者と手話の現状について
 
 手話通訳制度調査検討委員会の「第一部日本のろうあ者と手話の現状」では、国際障害者年の行動計画に基づいてろうあ者の概念・生活等の規定がされている。
 これらの概念規定などは、手話通訳と重要な関わりがあるが、以下手話通訳に関わりのある部分だけに絞り込んで述べることにする。


 「ろうあ者のコミュニケーションをめぐる問題点」の項で捉えられている手話通訳について

 

  ろうあ者の生活をめぐる問題点の項では、ろうあ者のさまざまな生活の局面が書かれ、ろうあ者のコミュニケーションをめぐる問題点では、手話通訳者のことが以下のように書かれている。

 

「ろうあ者の復権の歴史の中で、手話通訳者はろうあ者に対して口代わり、耳代わりにコミュニケーションや情報面の援助をすすめるのみならず、ろうあ者について十分な理解ができていない社会を時には啓蒙したりして、ろうあ者とともに生活を守り高めるような役割を担っており」

 

と「ろうあ者に対して口代わり、耳代わりにコミュニケーションや情報面の援助をすすめる」と手話通訳者の役割が「口代わり、耳代わり」であるとまず規定しているところに大きな問題がある。

  

   ろうあ者の「代理人」としての手話通訳者?

 

 「代わり」とは、あるものが他の人と「いれかわる」「交替」「後任」「見がわり」「代理人」の意味があり、これでは手話通訳者は、「ろうあ者が~するのではなく手話通訳者が~する」と規定している事になるのである。

 ろうあ者の「代理人」としての手話通訳者ということが明確に書かれ、ろうあ者が一個人としての基本的人権を持っていることの確固たる考えは見あたらないのである。
  手話通訳者がろうあ者の代弁者であるとする考えが存在していて、「ろうあ者の復権」を言いい、ろうあ者の人格を「認めない」。もしくは「低く見る」傾向があると言わざるを得ないのである。

 

  ろうあ者自身が人間として

社会に自らの諸権利と平等を要求していくことを否定するのか

 

 だからろうあ者自身が、人間として社会に自らの諸権利と平等を要求していくのではなく、手話通訳者がろうあ者のことを「代弁」して、社会的理解を得るようにしていかなければならないとする考えが読み取れる。
 ここには、自らの権利を獲得していくためにコミュニケーション保障が必要であり、そのコミュニケーション保障のために手話通訳者が役割を果たすというろうあ者も手話通訳者もともに平等な立場にいるとする考えは存在しない。そればかりか、ろうあ者の復権の意味が異なったものになって行っているのである。
 

「代理人」は、どのような代理人、どのような場合の代理人であるのか、が明らかにされていないため以下、報告書は、「代理人」である手話通訳の労働とその内容についてますます曖昧になり、自在に変容することになる。