手話 と 手話通訳

京都の手話通訳者の取り組みと研究の中からの伝承と教訓をみなさまに提起します。戦前戦後の苦しい時代を生き抜いたろうあ者の人々から学んだことを決して忘れることはなく。

手話通訳 を低い報酬にするため高い報酬に見せるカラクリ

 f:id:sakukorox:20150206222157j:plain

    手話通訳制度調査検討委員会報告書(1985年5月20日)の問題点とその後の手話通訳制度に与えた影響 (12)


厚生省の意図とその後の雇用された手話通訳者と
         登録手話通訳者による支援事業の問題
 
 1985(昭和60)年に「手話通訳制度調査検討報告書」(以下 報告書)が発表されて以降、手話通訳制度をめぐって、1988年度(昭和63年度)厚生省原案で手話奉仕員派遣事業を家庭奉仕員派遣事業に予算として組み入れることが明らかとなり、聴覚障害者団体をはじめ全通研も共同した運動によって、この組み入れを許さなかった。

 

  手話奉仕員派遣事業家庭奉仕員派遣事業

 「特化」しようとした国・厚生省の施策転換方向

 

 家庭奉仕員派遣制度は1956年(昭和31年)に長野県上田市で「家庭看護婦派遣事業」として発足し、1962年(昭和37年)から厚生省の補助事業となった。
 そして、1987年度(昭和62年度)の国の補助制度の内容として、家庭奉仕員派遣は、1時間当たり670円が補助の基本額とされていた。
 当時の手話通訳制度には手話通訳設置事業(1973年-昭和48年)と手話奉仕員派遣事業(1976年-昭和51年)があり、全国の地方自治体では手話通訳者の設置運動が中心だったことを考えても、手話奉仕員派遣事業を家庭奉仕員派遣事業に「特化」しようとした国・厚生省の施策転換方向は多くの疑問が残った。
 なぜなら、家庭奉仕員派遣事業に組み入れるということは、手話通訳制度全体を「時間刻みで派遣する」事業に変質させる狙いがあったのではないかと考えられるからである。
 さらに手話奉仕員と家庭奉仕員を兼務・合併させることで事業予算を削減しようとしたことも考えられる。

 手話通訳設置事業は、手話通訳者を手話事業所の職員として雇用することであり、手話奉仕員派遣事業は手話通訳者を手話通訳関係事業所に登録させ、必要な時に時間単価で派遣することである。

 

   聴覚障害者の手話通訳要求にまともに答えていない

 

 雇用された手話通訳者=「設置」手話通訳者が外勤することは「派遣」されると言い換えることができるが、時間刻みの時間単価ではない通常の業務として位置づけられるものであった。
 しかし、国の事業メニューは、設置した手話通訳者は雇用先の職場内に拘束して、職場以外のところには登録した手話通訳者を派遣することであり、聴覚障害者の手話通訳要求にまともに答えるものではなかった。

 

  時間刻みで出来ない手話通訳の仕事が切り捨てられている

 

 聴覚障害者の医療機関での受診、学校での教育や保育所での子育て、警察や裁判所での用件など、暮らしの重要な部分にかかわる支援事業は時間刻みで派遣される登録通訳者に対応させるのではなく、これらの手話通訳こそ、雇用された専門の手話通訳者が対応すべきことであった。
 雇用された、労働者としての地位を確保した手話通訳者が中核となり、その周辺に手話通訳の協力者が登録(雇用関係を有する形態が望まれる)され、一体的に聴覚障害者の地域生活の支援をするというシステムこそが、国民にも理解されやすい制度であった。

 

   手話通訳者は、翻訳(通訳)だけに限定されるものではない

 

 財団法人全日本ろうあ連盟は、「聴覚障害者のコミュニケーション支援の現状把握及び再構築検討事業-平成17年度(2005年度)報告書」で、「設置手話通訳者は、翻訳業務に限定されず、聴覚障害者の福祉向上のために以下のような様々な業務を担うべき」であるとしている。
 それは次のように明らかにされている。
①手話通訳
②情報提供

③相談・生活支援
④登録手話通訳者の派遣
⑤登録手話通訳者の養成・研修
⑥社会資源の開発・整備

事業内容の評価
⑧その他、聴覚障害者等の福祉向上・社会参加・自立支援に必要な業務……

 

   時給は高く見せられて内実は低い給与

 

 2004年度(平成16年度)、静岡県は、手話通訳者派遣単価を1時間3,180円に引き上げた。
 全国的にも2006年(平成18年)障害者自立支援法が施行された契機に派遣単価を引き上げた地域が増えている。
 1時間3,180円であれば、週30時間の嘱託職員の給料に換算すると、@3,180×30時間×52週=4,960,800円となる。
 しかし全国の現状は月17万円程度で雇用されている。年額でも200万円少しとなっている。
 そのため手話通訳者派遣単価の引き上げの取り組みと合わせ、専門職として雇用された手話通訳者の報酬アップは緊急の課題である。

 雇用された手話通訳者の業務は先に述べたように、時間で刻まれた派遣とは異なる幅の広いものであることを考えると、むしろ、正職員として配置し、手話通訳技術を有する福祉専門職として機能させることのほう価値のある事業を産み出す。