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手話と手話通訳

京都の手話通訳者の取り組みと研究の中からの伝承と教訓をみなさまに提起します。戦前戦後の苦しい時代を生き抜いたろうあ者の人々から学んだことを決して忘れることはなく。

障害者に即して自由権と社会権の統一的な実現が要請されるはずだったが

    障害者自立支援法の問題と今後

 2006(平成18)年4月、障害者自立支援法が施行され、同年10月からは地域生活支援事業(コミュニケーション支援事業など)の実施をもって本格実施となった。

  

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   憲法違反の障害者自立支援法改正

 

 しかし、この法律等は憲法で保障されたものとはあまりにもかけ離れたものであり、聴覚障害者団体や関係団体はコミュニケーション支援事業が有料化されるということに反対の運動を展開した。
 しかし、それにもかかわらず一部の市町村では利用料をも課すという、憲法違反の事態が生じている。

 

   障害者に即して自由権社会権の統一的な実現が要請される奈良教育大学玉村公二彦教授が指摘

 

 2006(平成18)12月、国連では「障害者権利条約」が採択された。手話通訳問題研究95号の特集記事の以下の文章に今後とも関心を寄せ続けなければならない多くのことが書かれている。

 

 「……自由権の即時保障のためには物理的バリアの除去や情報へのアクセスやコミュニケーション保障の方策の整備といった社会的な保障を伴うものとなるなど、実質上、障害者に即して自由権社会権の統一的な実現が要請されることとなっている点は注目される。」(奈良教育大学 玉村公二彦)

 

       手話通訳士の職務?

 

 1989年(平成元年)11月26日、厚生労働大臣公認の手話通訳士試験が実施された。

 

 厚生省は1982(昭和57年)年度、財団法人全日本ろうあ連盟に「手話通訳制度調査検討」を委託し、1985(昭和60)年5月に報告書が出された。 次いで、1986(昭和61)年度、厚生省は引き続いて「手話通訳認定基準等策定」を委託した。(このことの重大問題は、すでに書いてきているので再度お読みください。)

 

 このような経過を経て全日本ろうあ連盟は厚生省に対して、1987(昭和62)年5月に「中間報告」を、そして1988(昭和63)年に、「手話通訳士(仮称)」認定基準等に関する報告書を提出した。

 

 この中で手話通訳士の職務を

 

 ①聴覚障害者のコミュニケーションに関すること。聴覚障害者にかかわる「コミュニケーション」が円滑かつ確実にできるように、聴覚障害者が用いる多様な表現手段や、そのレベルに対応して、仲介・伝達すること。

 

 ②情報提供に関すること。「コミュニケーション」が正確・対等に行われるのに必要な「情報」を聴覚障害者と健聴者に提供すること。
とした。

 

 聴覚障害者のかかえる諸問題に対する基本的課題を先送りする手話通訳者の単なる資格制度へと限定

 

 全国手話通訳問題研究会(全通研)の運営委員会は、1987(昭和62)年8月22日に「手話通訳制度」に対する運営委員会見解を発表した。

 

 運営委員会は「中間報告」に対して、

 

「しかし、前項で述べたように、ここでの課題を聴覚障害者のコミュニケーション保障制度から手話通訳者の単なる資格制度へと限定してしまったことは、60年報告書の第一部で明らかにされた聴覚障害者のかかえる諸問題に対する基本的課題を先送りすることになった。」

と重大な点を指摘している。

 

  結果として手話通訳士認定基準等策定の委員会

となってしまった手話通訳制度を検討するための委員会
      多くの問題はが山積されたまま

 

 手話通訳に関する問題点に限って言うと、以下の問題点が指摘されていた。その概要は、

 

1,手話通訳設置は、全国の福祉事務所の1割にも満たない。自治体間の取り組みの格差も大きい

 

2,手話通訳者の6割が非常勤嘱託等、きわめて不安定な条件にあり、長期間にわたり従事することが困難な状態にある

 

3,行政機関に設置されている手話通訳者は、職務内容・権限・処遇等が不明確なため、手話通訳業務が所期の目的を十分に果たしていない場合が多い

 

4,専門性を持った手話通訳者の配置が不十分なため、聴覚障害者の要請に的確にこたえられない状態にある

 

5,聴覚障害者問題に関する相談業務等がしわ寄せされ、本来の通訳業務を越えて担当せざるを得ない状態にある

 

6,手話通訳者は、「聴覚障害者のリハビリテーションに関する知識」「社会福祉」について精通していなければならないが、そのための専門的養成のシステムが不十分である

 

7,手話通訳者の制度的裏づけ、専門家としての社会的認識が不十分なため、十分な活動ができない

 

 手話通訳制度を検討するための委員会は、結果として手話通訳士認定基準等策定の委員会となってしまった。

 このことにより、日本における手話通訳制度の在り方についての研究の発展が阻害されることになる。

 

 手話通訳制度に関しては多くの解決すべき課題があるにも拘らず、手話通訳士の養成や認定とその周辺に係る研究が重要視されていった。