手話 と 手話通訳

京都の手話通訳者の取り組みと研究の中からの伝承と教訓をみなさまに提起します。戦前戦後の苦しい時代を生き抜いたろうあ者の人々から学んだことを決して忘れることはなく。

もとめられる聴覚障害者が期待してきた手話通訳者像を再検証

   手話通訳に関する問題点は

    改善・改革されるどころかますます深刻な事態

 

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 手話通訳制度に関する多様な課題を総合的に研究する営みによってこそ、手話通訳の資格制度を含め個々の課題が広く深く検討できたはずである。

 

 もう一つは、手話通訳士の職務が規定されたことによって、現に手話通訳業務に携わる人たちの課題に適切な対応ができてこなかったことである。

 

 手話通訳に関する研究は、1968(昭和43)年の第1回手話通訳者会議を皮切りに2009(平成21)年の第41回全国手話通訳問題研究集会に続いている。

 1989(平成元)年に手話通訳士試験が実施されたが、当時の手話通訳研究の歴史は20年であり、十分な研究の発展を勝ち得ていなかった時期である。

 

 そして、手話通訳士試験実施後20年を経過したが、先に記した60年報告の手話通訳に関する問題点は改善・改革されるどころかますます深刻な事態を呈している。

 

 手話通訳者が社会的要請に応じて行っている業務内容の傾向は10年間何ら改善されることなく続いている

 

 2006(平成18)年全国手話研修センターが行った「全国市区町村におけるコミュニケーション支援事業についての実態調査報告書」によると、設置されている手話通訳職員の主な業務は以下のとおりである。(複数回答

 

1,手話通訳業務(83%) 

2,聴覚障害者に関連する相談業務(67%)           

3,手話通訳派遣事業のコーデイネート業務(59%)  

4,研修・講習会等の規格・運営(32%)

 

 また1996(平成8)年、全国手話通訳問題研究会が行った「手話通訳者の実態と健康についての全国調査報告書」によると、福祉・医療関係に配置された手話通訳者の主な業務は以下のとおりである。(複数回答

 

1,手話通訳業務(90.9%) 

2,聴覚障害者に関連する相談業務(32.1%) 

3,一般業務(32.8%) 

4,聴覚言語障害に関連する業務(31.2%) 

 

 上記の二つの調査の趣旨は異なってはいるが、手話通訳者が社会的要請に応じて行っている業務内容の傾向は、全くと言っていいほど似ている。

 この傾向は10年間何ら改善されることなく続いている点は注目に値する。

 

  手話通訳士資格制度は現実との乖離を大きくしてきた

 

 手話通訳士資格制度は、手話通訳者の実態から切り離せない業務を一部切り取ってしまったものである。

 

 そして、手話通訳士の職務に関する考え方がそのまま現場で働いている手話通訳者の業務の在り方にも当てはめられるという悲しい事態が進行してきた。

 

 「手話通訳論」は手話通訳士の職務に関する考え方を認めながら展開されてきたため、その理論は現実との乖離を大きくしてきた。

 

国の施策に先んじて実施してきた手話通訳者の雇用と配置

 

 手話通訳者の雇用と配置は地方自治体が国の施策に先んじて実施してきた。その呼称は全国的に「手話通訳者」である。

 

 しかし、大阪では「ろうあ者福祉指導員」という呼称で地方自治体が雇用している。

 この呼称については今日まで真剣な議論はされたとは言いがたい。

 

 そのため手話通訳者が、1970(昭和45)年代以降に雇用がはじまっていく経過をたどりながら、聴覚障害者が期待してきた手話通訳者像を再検証することが求められる。