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手話と手話通訳

京都の手話通訳者の取り組みと研究の中からの伝承と教訓をみなさまに提起します。戦前戦後の苦しい時代を生き抜いたろうあ者の人々から学んだことを決して忘れることはなく。

法律における手話通訳者の内容と名称の再検証と今日の発展段階

    各法律の手話通訳者の内容と名称の再検証

 

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手話通訳研究課題として考えられるのは、

1,手話通訳者の呼称。現状のままでいいのか。

2,手話通訳者の業務は現実から出発して、独自の業務を主張し制度的保障の方策はないか

の二つがある。

 1985(昭和60)年10月、京都手話通訳制度化検討委員会がまとめた「手話通訳の制度化めざして」の提案は、現在においても参考となる部分があるだろう。

 以下に関連部分を紹介する。

 

 現時点での危険性手話通訳という名称を使用すること

「……『手話通訳』という名称を使用することの現時点での危険性についてである。

 

 現在、手話通訳者と呼ばれる人々が日常おこなっている職務は様々な範囲のバラツキをもちながら、基本的には、ろうあ者の様々な生活問題を解決し、その生存権=発達権の保障をめざす社会福祉労働として機能している。

 

 手話通訳という行為の名称=機能の名称は、その労働の実相を正しく反映しているとは言いがたい。

 

 手話通訳の制度化と言った場合、その労働の一部を切りとり、そのことによって、ろうあ者の切りとりや、選択を生む危険性が強くなる。

 

 手話通訳の独自の領域が未整理である現状では、手話のできる人と手話通訳のできる人との混同などの一因にもなるものである

 

 私たちは、現に存在している“手話通訳”の労働内容の検証を通して、『「手話通訳技術をもったろうあ者福祉に関する専門職とも言うべき労働者』の存在を知っている。

 

 手話通訳の制度化とは、この様な中身をもつ労働の制度化でなくてはならない。」

   

   2000(平成12年)手話通訳事業が出されたが

 

 手話通訳事業が法律に規定されてきたのは、平成12年に社会福祉事業法が改正され「社会福祉法」と改名され、この法律の中で第2種社会福祉事業に「手話通訳事業」が規定されてからである。

 

 さらに、平成18年度に施行された障害者自立支援法第77条に市町村事業として地域生活支援事業が規定された。

 

 第2項では「聴覚、言語障害、音声機能その他の障害のため意思疎通を図ることに支障がある障害者等その他の日常生活を営むのに支障がある障害者等につき、手話通訳等(手話その他厚生労働省令で定める方法により当該障害者等との意思疎通を仲介することをいう。)を行うものの派遣、日常生活上の便宜を図るための用具であって厚生労働大臣が定めるものの給付又は貸与その他の厚生労働省令で定める便宜を供与する事業」

となっている。

 

 その後の厚生労働省の通知等により、コミュニケーション支援事業という名称で、市町村の実施は必須となった。

 

  時間単価で手話通訳を「時間で切り売り」

      手話通訳者の雇用を前提とせず

 

 平成18年度、社会福祉法人全国手話研修センターが行った「全国市町村におけるコミュニケーション支援事業についての実態調査」報告書(1835市区町村対象、回収率49.9%)によると、有効回答数905市区町村のうち387市区町村で手話通訳設置事業が実施されている。

 

 また、手話通訳者(手話奉仕員含む)派遣事業の実施は854市区町村である。

 

 障害者自立支援法に基づき市町村必須事業となった以降に開始されたのは約400市区町村、実に47%を占めている。

 

 社会福祉法の手話通訳事業と障害者自立支援法の地域生活支援事業にいうコミュニケーション支援事業とは、手話通訳の養成、認定、設置・派遣を指しているが、全国の動向は手話通訳者の派遣事業に限定した施策の展開が特徴的である。

 

 この手話通訳者の派遣は、手話通訳者の雇用を前提とするものではなく、市区町村に登録され、必要に応じて依頼を受けて時間単価で手話通訳に従事するもので、雇用関係のない身分の不安定な手話通訳者の増産といってもいいものである。


 これでは手話通訳制度の安定的な基盤づくりはおろか、手話通訳事業は「時間で切り売りされる」、場当たり的な事業に矮小化される恐れがある。