(国会議事録 資料と解説)
第084回国会 予算委員会第四分科会 第3号1978(昭和53)年3月31日(金曜日) 議事録より引用&解説
ろうあ者福祉、手話、手話通訳などなどのことが日本の地方議会で初めて取り上げられたのが福島。福島のろうあ協会や手話通訳者が国会議員と話し合い、いろいろなところに案内して国の福祉の改善に迫ったことはあまり知られていない。1978年予算委委員会の議事録を入手するのに苦労をしたが、今は容易に入手できる。この議事録の内容を解説と共にみなさんと共に考えて行きたい。佐瀬駿介
何ら恥ずかしいことをやってもいない
学校に来ないでくれ
と言われるのはとてもつらい
○下田京子君
また、ある聞こえないお母さんが言われました。
高校三年生の娘の卒業式をぜひ母親として見届けたい。
しかし、小学校から高校まで、親戚が母親がわりで行っており、卒業式にもお母さん来てくれるなと言う。
自分はりっぱに働いており、悪いことをしておらない。
何ら恥ずかしいことをやってもいない。
それなのに、子供にまで学校に来ないでくれと言われるのはとてもつらい。
幸い、いま挙げたケースは手話通訳者や仲間の援助で解決しましたが、こういった例は幾らでもあります。
お話しすることの
口のかわりをきっちりと
やっぱり保障していかなければならない
まだまだ続くわけですけれども、私はこの聾唖者協会の方のお手紙、訴えを見まして、本当に耳が不自由である、お話ができないということだけで母親としての権利――子供も産めない、あるいは子供にまで学校に来ないでほしいと言われるようないまの社会的な情勢があるということですね。
このことは何としても解決していかなきゃならないんじゃないか。
聴覚障害者にとって必要な耳のかわり、そしてお話しすることの口のかわりをきっちりとやっぱり保障していかなければならないんじゃないか、こういうふうに思った次第ですが、大臣、この点については全く私と同様かと思うんですけれども、なお改めて大臣のお考えをお聞かせいただきます。
手話通訳者 この制度が
どうしてもいま制度として必要じゃないか
大臣もお認めになったんだと思う
○国務大臣(小沢辰男君) おっしゃるとおりだと思います。私も同感です。
○下田京子君 おっしゃるとおりだという一言でございましたけれども、これはとっても大事だと思うんですね。
といいますのは、私は耳にかわるもの、またお話しする口にかわるものとして手話通訳者、この制度がどうしてもいま制度として必要じゃないかということを大臣もお認めになったんだと思うんです。
〔主査退席、副主査着席〕
このことをしっかり認められたらば、国のいままでやられている施策ですね、まあ手話通訳設置事業あるいは手話奉仕員養成事業、聾唖者日曜教室開催事業、手話奉仕員派遣事業、こういったものを身体障害者地域福祉活動促進事業と称して、他の事業とあわせて十二の中に特に聴覚障害者のために四事業を盛り込んで予算化していると思うんですけれども、この予算ですね、五十一年出発しまして、ずっと前からのもありますけれども、一体五十二年、五十三年度対比でどのぐらい変わるものでしょうか。
大変伸びたようになりますけれども
一道府県にしますと
五百万円だったのが七百万になっただけ
○政府委員(上村一君) 身体障害者の地域福祉活動促進事業の予算でございますが、五十二年度がトータルで一億四千十三万円、対前年に比べますと二八%の伸びであったわけでございますが、五十三年度は総額で一億九千六百万円、対前年に比べますと三九・九%、四割ぐらいの伸びにしたわけでございます。
○下田京子君 いまのは事業全体総額だと思うんですが、これは各県ごとに見ますと、対前年比で額でひとつ答えてください。
○政府委員(上村一君) 一県当たり国庫補助基本額と申しますのが五十二年度では五百万円でございます。五十三年度予算案では七百万円というふうにしておるわけでございます。
○下田京子君 四十七都道府県の中で、一道府県当たりにすると、最初の総体的な数字ですと大変伸びたようになりますけれども、一道府県にしますと五百万円だったのが七百万になった。
私、これで対応できるかどうかということが大変疑問なんですね。
一カ月の給料九万三千五百円
あと何らないわけ
国がそういう状況の中で、実際に各都道府県あるいは市町村自治体がどんな苦労をしながらどのような事業をしているか、私なりにつかんでいるのをまずお話し申し上げたいと思うんですが、北の北海道でございますと、北海道全体で聴力障害者といわれる人たちがおよそ一万六千人ほどいるんじゃないか、こう言われております。
そういう中で、道として常勤の嘱託ということで手話通訳者を八名雇用しております。
金額は一カ月の給料九万三千五百円ということで、あと何らないわけなんで、こういう実態でございますけれども、やっております。
各自治体いろいろやられている
厚生省としておつかみでしょうか
それから、福島県の場合です。この福島県ですと、県としては五十二年から同じく常勤の嘱託として一カ月五万九千円のお給料で一名設置しております。
常時設置しているわけですね。
福島の各自治体で、四市の中で特にこれらの事業が進んでおります。
若松というところでは正職員がおりまして、一カ月のお給料が十万五千四百円、ボーナスが五・二カ月分プラスになります。
さらに常勤嘱託一名、来年から設置しようというふうになっております。
福島市になりますと、これは来年二名、五十三年度二名にするということで、一カ月八万八千円、ボーナスが三カ月分。
それから郡山市というところでは、これは四十九年からやっておりますが、五十三年にまた一名入れまして二名にして、一カ月七万六千円でボーナス四・七カ月分。
いわき市というところが四十九年から二名置いております。
一カ月八万一千四百円でボーナス四・二五カ月分ですね。
こういうふうに、各自治体いろいろやられているんですけれども、まず、こうした事業が自治体でいまのように具体的にやられていること、厚生省としておつかみでしょうか。
母親としての権利もほとんど保障されていない実態。それらの問題を改善する一つとして手話通訳の保障を具体的に国会で取り上げられた。北海道や福島県の実態を基に手話通訳者が嘱託でありながら薄給過ぎることを指摘。その改善を手話通訳制度の確立なくしてはならないと国・厚生省に迫った画期的質問である。
会津若松市などの手話通訳者の給料が出されているが、この給料では正規職員と異なって各種出費が多く事実上最低限の生活すらできない実態があった。
一道府県にしますと五百万円だったのが七百万になったのは、身体障害者の地域福祉活動促進事業の予算であって、この中からそれぞれ対応されるため国の手話通訳保障等に対する予算は、ゼロもしくはマイナスだったのである。