(国会議事録 資料と解説) 第084回国会 予算委員会第四分科会 第3号1978(昭和53)年3月31日(金曜日) 議事録より引用&解説 ろうあ者福祉、手話、手話通訳などなどのことが日本の地方議会で初めて取り上げられたのが福島。福島のろうあ協会や手話通訳者が国会議員と話し合い、いろいろなところに案内して国の福祉の改善に迫ったことはあまり知られていない。1978年予算委委員会の議事録を入手するのに苦労をしたが、今は容易に入手できる。この議事録の内容を解説と共にみなさんと共に考えて行きたい。佐瀬駿介
自治体でやられている
常勤のこうした手話通訳員の制度と基準
○下田京子君 当面、財政的なことで人件費等を見て国が全体的に責任を負うかどうかということではどうもいま何とも言えないけれども、方向としては各自治体でやられている常勤のこうした手話通訳員の制度というものは言うまでもなく奨励していきたいというふうに受けてよろしいかと思うんですが、そういうことになれば、当然御承知かと思うんですけれども、手話通訳者を常勤で置くにはそれなりにどのぐらい手話ができるかとか、採用の基準というものが必要ですね。
この採用の基準について、現在あるものは全日本聾唖連盟で出されております手話通訳認定規則というものしかないわけなんです。
各自治体はこの認定規則に基づいて試験をし、一級、二級、三級ということでの資格を得た中で、特に一級、二級に該当した人たちを正職員、または先ほど申しましたけれども、常勤の嘱託という形で採用してきているわけなんです。こういったことについて御存じありますか。
遅くない時期に国で責任を持って
常勤の手話通訳者を設置
○政府委員(上村一君) 手話通訳者の認定基準というのを聾唖者連盟がつくっておられることにつきましては承知しておるわけでございますし、そういった資料も持っておるわけでございます。
○下田京子君 となりますと、当面政府として国家の認定基準というようなのはもう設けなければならないところに来ているんじゃないでしょうか。ということが一点ですね。
それと同時に、望ましい方向としては常勤の嘱託なり職員というものを配置する方向で各自治体がやられることを奨励したいという意味の御答弁はいただいているわけなんですが、となれば、まあいますぐということは抜きにしても、将来そんなに遅くない時期に国で責任を持ってどの程度一体そういう常勤の手話通訳者を設置すべきかどうか、あるいはどんなところに必要なのかとか、また各都道府県がやられている、自治体がやられているそういうお仕事をもう調査していかなきゃならないんじゃないかというふりに思うわけなんですけれども、この点大臣に御答弁いただきたいんですけれども、お願いしたいことは三点なんですよね。
まず調査を
聴覚障害者本人がどんな要求を
新たな計画を検討を
一つは、いまのような状況をあるところは知っているけれども全体的には知らないということなので、まず調査をいただきたいということが一点でございます。
それから第二点目には、その調査の際に、国がやっている四事業だけじゃなくて、各自治体が独自にやられているものやあるいはいろいろと聴覚障害者本人がどんな要求をお持ちで、どんなことをお願いしているかという、そういう中身をもう一回洗い直していただけないか。
三つ目には、そうした調査内容に基づいてこの事業そのものも含めた見直し、新たな計画というものを、一番最初に申しましたけれども、福祉法制定来年三十周年というふうな時期でもございますので、どうかこの検討をいただけないか、これは大臣にお願いしたいわけです。
各県の手話通訳者
人数、能力を持っているか調査をする
○国務大臣(小沢辰男君) 私もいまお話聞いて、各県がどういうような手話通訳者を抱えておるのか、あるいはどの程度抱えておるのか、人数、またいなところがどれぐらいあるのか、それからその方々がどの程度のいままで何といいますか能力を持っている人なのか、人数等を含めて調査をする必要があると思いますね。
これはやっぱり、国が調査をするといって調査費を計上して一般的な人口動態調査のようなわけではない、県と連絡すればよくわかることですから。
聾唖者の方々が現在の制度の中で
一番ニーズの多いもの
どういう点が不備を 見直す必要がある
それからもう一つは、聾唖者の方々が現在の制度の中でどういう点が不備だと思うのか、むしろ一番ニーズの多いものはどういうことなんだと、これをつかまないで対策は出来ないわけですから、これはもう当然のことだと思います。
それから、その結果、いまやっているいろいろ養成事業あるいは派遣事業等について見直す必要があるならこれは見直していかなきゃいかぬことは当然のことでございます。
おっしゃるように、なるべく自立、自助の努力をお助けするというのが社会福祉の基本だと思いますものですから、この点は早急にわれわれの内部でも相談をしまして、どういう方法があるのかやっていきます。
大臣答弁で「各県がどういうような手話通訳者を抱えておるのか、あるいはどの程度抱えておるのか、人数、またいなところがどれぐらいあるのか、それからその方々がどの程度のいままで何といいますか能力を持っている人なのか、人数等を含めて調査をする必要があると思います」「一番ニーズの多いものはどういうことなんだと、これをつかまないで対策は出来ない」などという手話通訳制度化についての国の答弁。
ところが、「自立、自助の努力をお助けするというのが社会福祉の基本だと思いますものですから、この点は早急にわれわれの内部でも相談を」という
「内部」は、厚生省の官僚たちを意味する。
一番のニーズを、という積極的方向が、「自立自助努力」を前提として官僚たちの厚生行政、福祉行政に計画されていたことをこの段階で見抜いておかなければならない。
後に自立支援法やさまざまな援助システムが打ち出されていくが、この前提
になるのが自立自助=自分でコントロールして、 他人に依頼せず、自分の力で自分の向上・発展を遂げることであるとすることが社会福祉の基本として打ち出されていくことが国会の場で明らかにされたのである。
障害者は、自分のことは自分でしなさい、という惨い政策が打ち出され、そのことを基礎にさまざまな事業メニューが打ち出されていく。
近年、支援、援助という言葉が飛び交っているが、これはあくまで障害者たちが自分のことは自分ですることを前提にするための「過渡的措置」であって、援助しても「自分のことは自分でする」ことが出来ない人はうち捨てるという非情で冷酷な国の政策が前提にあるということを見抜いておかなければならないのである。
その意味でも、国は長期にわたって福祉の切り捨て政策を実施してきたとも言える。そこで、それに対峙する障害者の要求と運動がありその狭間の中で国の政策が変容してきたことも観ておかなければならない重要な事項である。