(国会議事録 資料と解説) 第118回国会 地方行政委員会 第4号1990( 平成二年)六月一日(金曜日)議事録より解説 手話通訳者の職業病及び労働災害認定について国会史上初めて全面的に取り上げられた。この時の議事録の内容を解説と共にみなさんと共に考えて行きたい。佐瀬駿介
厚生省
手話通訳者にこういう病気が出ている
ということは承知していたか
厚生省 一例という論文が一つしか
○諫山博君 斉藤記者は、内野さんが四年前から体の不調を感じ始めたと説明していますけれども、これに続いて内野さんの談話が出てきます。
内野さんの肩書は四条畷市専任手話通訳者、嘱託職員、こうなっています。
「今午前中ですから、元気ですけど、昼から、また夕方、疲れてくると体がしびれたり、重くて動きにくく、晩御飯のときお箸をにぎれなくて落としてしまう。寝るとき腕の辺が鉛のように重くて、なかなか寝づらい、そういう状態があります。」
これはNHKを通じて全国に放映された内容です。
厚生省、手話通訳者にこういう病気が出ているということは承知していましたか。
○説明員(福山嘉照君) 厚生省といたしましては、頸肩腕障害につきましては、先生お話しのように、ある程度の情報を得ているというのは、障害者の方々また手話通訳者の方々からそういうお話は伺っておったところでございます。
ただ、この頸肩腕障害につきまして学術的に研究をなされた論文、これはもう御案内かと思いますが、滋賀医科大学の垰田先生の専任手話通訳業務に発症した頸肩腕障害の一例という論文が一つしかございません。
そんなところで、私どもの方としてはなお今後いろいろ勉強をさせていただかなければならないというふうに考えておる次第でございます。
手話通訳者の健康状態を調べた資料
労働省厚生省自治省 伺っておりません
○諫山博君 NHKのテレビをもう少し紹介します。
斉藤記者の談話として「全通研、全国手話通訳問題研究会が手話通訳者の健康状態を調べた。回答を寄せた四十三人の手話通訳者のうち、八〇%の人が頸肩腕障害に似たさまざまな体の不調を訴えている。」。
これで関係者が大変驚いて相当広範囲な手話通訳者の健康調査を行っています。
健康調査を行った人は、全通研・手話通訳者の頸肩腕障害調査研究プロジェクトチーム、これには今厚生省から言われた垰田先生も参加しておられます。
そしてことしの四月七日に手話通訳者の健康調査中間報告というのを発表しました。
厚生省はごらんになりましたか。
○説明員(福山嘉照君) 大変残念でございますが、まだ読んでおりません。
○諫山博君 労働省はどうですか、知っていますか。
○説明員(松村明仁君) 今御指摘の資料についてはまだ拝見しておりません。
○諫山博君 手話通訳者の頸肩腕障害というのは最近大変問題になってきたことです。
この問題で一番豊富な資料を持っているのは私は障害者団体だと思います。
続いて滋賀医科大学ですね。
このアンケート調査でどういう結論が出ているのか、厚生省も労働省も御存じないそうですから少し説明します。
調査対象は、近畿二府四県で手話通訳を業務として行う可能性のある者すべて。対象は百五十六名、回答を寄せた者は百四十五人、内訳は男性四十一人、女性百四人です。
まず、自覚症状の訴え率。肩が凝る、だるい八五・五%、首が凝る、だるい五五・一一%、手指がしびれる一五・二%、手指が震える一一・七%。これは平均ですけれども、週五日以上勤務している人の場合にはこの率がずっと高くなります。
肩が凝る、だるいというのが九四・六%、首が凝る、だるいが七〇・〇%。
つまり手話通訳の時間が長い人はずっとこの症状が高くなっているということです。日常生活にどういう不便なり苦痛を与えているか。
この問題では布団の上げおろしがつらい二三・四%、髪を解くのがつらい一三・八%、タオルをかたく絞れない一一・七%。
さまざまな項目がありますけれども、若干だけを紹介しますと、読み取り通訳疲労時の症状訴え率、肩や首や腕が痛くなる二一・四%、腕や指が動かなくなる三・四%。
そのほか非常にさまざまなデータが出てきますけれども、この中間報告を受けて次のような総合判断が示されています。十人に四人が不健康を訴えている。
不健康は広範に及び深刻な実態になっている。
これがプロジェクトチームの行ったアンケート調査の結論です。
こういう結果は厚生省、労働省聞いていませんか。
○説明員(福山嘉照君) 伺っておりません。
○諫山博君 労働省は。
○説明員(松村明仁君) 伺っておりません。
○諫山博君 自治省はどうですか。
○政府委員(滝実君) 私どもは聞いておりません。