手話を知らない人も
手話を学んでいる人もともに
{再編集投稿・1969年頃}京都における手話と手話通訳の遺産と研究・提議 佐瀬駿介
ある日のこと。歯科治療中に隣から強い目線を感じて、ふとみるとIさんが居た。
彼は先に治療が終わったが待合室で待っていて、先生に聞きたいことがある。手話通訳してくれないか、と言って来た。
もちろんすぐ、先生におねがいしてIさんのたずねたいことを手話通訳した。
差し歯をのみ込んだ
お腹の中で引っかからないでしょうか
Iさんは「差し歯」が抜けて、治療を受けに来ていたが、実は「この差し歯をのみ込んでしまったんです。お腹の中で引っかからないでしょうか。」と歯科医に聞きたかったのである。
歯科医は、カルテを見て、自分ののどから胃、腸を指で這わせて、お尻に握り拳を当てて、手を「パー」にした。
Iさんは大笑い。
「うんこで出るん。大丈夫ですか、本当に」
とそれでも歯科医に聞くと歯科医は
「心配しなさんな、アンタの差し歯なら大丈夫。」
「また新しいのを作るから。」
と説明してくれた。
それがIさんとの出会いだった。