手話を知らない人も
手話を学んでいる人もともに
{再編集投稿・1969年頃}京都における手話と手話通訳の遺産と研究・提議 佐瀬駿介
危惧感が現実のものとなって
Iさんの続きの記録を、と少なくない手話通訳者に頼んだが梨の礫で、少し病気がよくなった頃には、Iさん夫婦は死んでいた。
痛恨の極みであった。
しかも、永久保存として録画されたビデオテープも破棄?紛失されてしまっていた。
かって抱いていた映像に残してもろうあ者が語る手話の意味が後々の人々に伝わらないのではないか、という危惧感が現実のものとなっていた。
Iさんの手話表現の「蚕」
人差し指と中指を
「交叉にうねうね」と動かす
いつでも出会えるからと身近なひとの記録を後にしたのが……と後悔は尽きなかった。
ろうあ者は表現はの「名人だ」と思うこともあったし、手指だけの動かし方だけが手話でないということも学んだのは貴重な体験だった、と思いながらも痛恨の極みは消えそうにない。
さて、Iさんの手話表現の「蚕」は、唇の下に人差し指と中指をあてて微妙に動かす表現だった。
「蚕」=「白い」・「虫」の手話表現ではなかった。
私も「まねて何度もやって見ても出来なかった」。
Iさんの奥さんもやってみたが、Iさんと同じように出来ないで大笑いした。
唇の下に人差し指と中指をあてて、「上下に動かす」ことは出来たが、Iさんはそれはちがう、と人差し指と中指を「交叉にうねうね」と動かした。
私もIさんの奥さんも万歳してしまって、Iさんに聞くと「蚕が繭を作るときの生絲(きいと)だ」と言う。
大学教授はIさんの言う通りだと
蚕が繭作るときに出すものは、一本の糸になるのとちがうの、と聞いてもちがうと言う。
その手話出来るように練習わ、と言って帰ってから、京都工業繊維大学養蚕科(当時)の学生に聞いて調べてもらった。
大学教授に聞いたところ、Iさんの言う通りだとのこと。
蚕は繭を作るとき二つの液を出してそれを絡ませてる。
見た目には1本に見えるけれどちがうのだ、と言う返事だった。
養蚕科の学生も私も「へーっ」で終わってしまっていた。
カイコがはく糸は、0.02ミリほどのだが、ともかく蚕=加悦+谷で、加悦谷がIさんの生まれたところだと理解していた。
しかし、近年NHKの「アインシュタインの眼」の放映を見てびっくりしてしまった。