手話 と 手話通訳

手話通訳の取り組みと研究からの伝承と教訓を提起。苦しい時代を生き抜いたろうあ者の人々から学んだことを忘れることなく。みなさんの投稿をぜひお寄せください。みなさんのご意見と投稿で『手話と手話通訳』がつくられてきています。過去と現在を考え、未来をともに語り合いましょう。 Let's talk together.

京都市認定手話通訳 制度はなぜつくられたのか

 f:id:sakukorox:20141211231855j:plain

    手話通訳者であることを証明するものはなかった

 

 京都市に専任手話通訳者が配置された当時の手話通訳者には、手話通訳者であることを証明するものはなかった。
 ある人は、職人であり、教師であり、施設職員であり、行政職員であっても手話通訳担当ではないということで、ろうあ者の依頼を受けて手話通訳に行っても相手側(健聴者)から

 

 手話通訳者は立ち去れ。
 ろうあ者と口話や筆談で充分話ができる。
 第三者は立ち入らないでくれと手話通訳を拒否されるこ

とがしばしばあった。

 

       手話通訳者としての「公的肩書き」があれば

 

 たいていの場合は、ろうあ者の要求を聞くと相手側(健聴者)が不利になることが明白な場合であった。
 ろうあ者も相手側の剣幕にたじろぎ手話通訳に頭を下げて手話通訳を断るという悲惨な出来事が多くあった。
 そのため手話通訳者としての「公的肩書き」があれば、相手側も手話通訳を断れないだろう。

 そればかりか、「手話通訳の労働は公的なもの」であるから、行政は何らかの対策を示す必要に駆られるだろうという思いが手話通訳者集団にあった。
 そういうことを背景に、京都市の専任手話通訳者が京都市に企画提案したのが、京都市手話通訳認定制度である。

 

     手話通訳者を京都市長が認定する  認定書と認定証明書

 

 これは、京都市長が、京都市在住もしくは京都市内で手話通訳をしている実績豊富な手話通訳者を京都市長が認定するというものであった。

 そして、認定書と認定証明書が手話通訳者に渡された。

 この認定制度は、何らの財政措置も講じられない、手話通訳者に何らの謝礼も払わないというものであったが、京都市が手話通訳を公的認定する。

 

  日本の歴史上初めて

   手話通訳の労働は公的であり公的責任があると

 

 すなわち、手話通訳者を公的に認定という点でそれまでの任意に手話通訳をしているとされていた現状を大きく変えるものであり、手話通訳の労働は公的であり、公的責任があるということを行政が日本の歴史上初めて認めたものであった。

 

    京都市規則第16号を公布

 

 京都市は、認定手話通訳者が手話通訳を行っても交通費も支給しないという対応をしてきたが、その後の月日の中で手話通訳派遣の予算措置を行う。
 京都市が認定した、という公的認定は予算措置にともなって徐々に改善されるが、その反面、現在では、予算措置がされるものを手話通訳として考えられ、認定制度の幅広い公的認定という当初の目的が40年以上の月日とともに忘れられがちになっている。
 しかし、発足当時はそうではなかった。


  1971(昭和46)年5月13日付で京都市は、京都市規則第16号を公布した。この規則は、京都市手話通訳認定規則と名付けられていた。
 規則では、

 

(目的)
第1条 この規則は、聴覚及び音声、言語機能障害者(以下「聴覚障害者等」という。)との手話を主とする意思伝達技術(以下「手話技術」という。)及び聴覚障害者等に関する知識を持った者であって特に優秀な者を京都市手話通訳者(以下「通訳者」という。)として認定することにより、聴覚障害者等との意思疎通のため通訳を必要とする際の便を図り、もって聴覚障害者等の福祉の増進に寄与することを目的とする。

 

(申請)
第2条 通訳者の認定を受けようとする者は、京都市手話通訳者認定申請書(第1号様式)により市長に申請しなければならない。

 

(資格)
第3条 前条の申請をすようとする者は、次の各号に該当する者でなければならない。
(1)学校教育法56条第1項の規定により大学に入学することが出来る者またこれと同等以上の学力があると認められる者であること。
(2)通訳技術における聴覚障害者等に対する福祉活動(以下「通訳活動」という。)の経験がおおむね3年以上あること。ただし、聴覚障害者等の福祉関係機関または施設の業務に従事する者は、この限りでない。
(3)市本の区域内において通訳活動に従事出来る者であること。

 

(審査)
第4条 市長は、第2条の申請があったときは、申請した者に手話通訳研修を受けさせ通訳者として必要な通訳技術及び聴覚障害者等に関する知識を有するかどうかを審査する。

 

(認定)
第5条 市長は、前条の審査の結果、通訳者として認定したときは、申請した者に対し、京都市手話通訳証(第2号様式)及び京都市手話通訳者認定証(第3号様式)を交付する。

2 市長は、前条の審査の結果、認定しなかったときには、その旨を申請した者に通知する。

 

(遵守事項)
第6条 通訳者は、次の事項を守らなければならない。

(1)常に通訳技術及び聴覚障害者等に関する知識の向上に努めるとともに、本市の主催する手話通訳研修を年1回以上受けること。

(2)通訳活動を通じて知り得た個人の秘密を守ること。

 

(認定の取消し)
第7条 市長は、通訳者が前条の規定に違反したときまたは通訳者として不適当と認められる事由が生じたときには、認定を取り消すことがある。

 

(届出)
第8条 通訳者は、住所、氏名、本籍、勤務先等に変更を生じたとき及び手話通訳証を紛失したときは、市長にその旨を届けなければならない。

 

(委任)
第9条 この規則に定めるもののほか、通訳者に関して必要な事項は、民生局長が定める。

 

  この京都市手話通訳認定規則は、今日の手話通訳や手話通訳制度を考察する基礎的要件を満たしている。

 

 しかし、基礎的要件を今日まで発展させてこれなかったことに注視しなければならない。