手話 と 手話通訳

手話通訳の取り組みと研究からの伝承と教訓を提起。苦しい時代を生き抜いたろうあ者の人々から学んだことを忘れることなく。みなさんの投稿をぜひお寄せください。みなさんのご意見と投稿で『手話と手話通訳』がつくられてきています。過去と現在を考え、未来をともに語り合いましょう。 Let's talk together.

苦悩した自治体 手話通訳者 制度の矛盾点、その改善・充実の方向を考えて

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②手話通訳以外の業務兼任の評価をめぐって

 

   「専任」というのではなく、身体障害者福祉・精神薄弱者福祉・各福祉団体の育成・各施設入所・老人クラブ・福祉医療・庶務・交通災害共済などの1つ又は複数の業務を“兼任”させられているが

 

 京都における手話通訳の公的保障に対するろうあ運動は、大体その仕事に従事する“専任手話通訳者”の設置を要求として掲げて今日まできており、その成果として広く行政に手話通訳を保障させてきた。
 しかし、京都府下の自治体手話通訳者は、「専任」というのではなく、身体障害者福祉・精神薄弱者福祉・各福祉団体の育成・各施設入所・老人クラブ・福祉医療・庶務・交通災害共済などの1つ又は複数の業務を“兼任”させられている。

 私たち自治体手話通訳者は、こうした現状を単に否定的に見て行政不信をいだくのではなく、現実をしっかり見すえた上で、課題を明確化していく視点を堅持しなければならない。
 重要なことは、手話通訳の役割と課題がきっちりこなせる条件がそれぞれの職場で確保出来ているかどうかということである。

 

   自分の仕事量が10あるとすれば

 

 自分の仕事量が10あるとすれば、ろうあ者の諸要求に応える仕事量が3、4であるとか、各市町の実情により比率には差がでて来るものの、ランク付けをするなら、下位からのランクであるのか、上位からのランクとして即応的・優先的に手話通訳者の業務に専念できるか、より進んだ積極的なろうあ者福祉の仕事を確立・拡大していける条件があるのか、を判断していくことが大切になっている。

 

      手話通訳者はオールマイティな力量が必要であり

   そうなれるようにそうした努力を怠ってはならない

 

 自治体手話通訳の保障は、手話通訳者個人の問題としてではなく、行政にしっかり根ざしたものとして、兼務する仕事についても不充分さを残さずきっちりと仕上げ、同僚の信頼をえるなかで築いていく中で改善を図ることが大切である。
 同時に、直接より多くの住民と接するなかで、手話通訳やろうあ者の問題を“地域に正しく広めて”いく役割が果たせるように考えていかなければならない。
 ある意味においては、手話通訳者はオールマイティな力量が必要であり、そうなれるようにそうした努力を怠ってはならないである。

 

   どんな役割を果たすのか そのことがろうあ者の生活にとってどんな意味をもつのか

 

③ ろうあ者・ろうあ運動とともに、自治体通訳の制度内容を改善する

 

 ①で述べたような行政内におけるろうあ者通訳要求に対する否定的な考えについては、その都度、ろうあ者要求の背景や、個々の手話通訳を実施するなかで、どんな役割を果たすのか、そのことがろうあ者の生活にとってどんな意味をもつのか、などについて話し合い、一つ一つのつみ重ねとその努力を大切にしていかなければならない。

 場面によっては、ろうあ者の連帯者として、自主的な手話通訳活動を行う場合がある。
 しかし、それだけにとどまっておれば、ろうあ者にとっては、ともかく手話通訳者がきてくれた、ということで終わってしまい、手話通訳制度内容の改善の道は閉ざされてしまう。
 手話通訳者個人として行けば、矛盾を残したままになり、本来の制度としてあるべき姿が個人の犠牲や個人的力量によってカバーされるのでなくなる。
 手話通訳が制度として確立されるためには、ろうあ者・ろうあ協会とともに制度の矛盾点、その改善・充実の方向を考えていくことが一番大切である。

 

   広域行政の手話通訳

 

③ ろうあ者通訳要求の保障の多様的形態の検討について


 “いつでも どこでも どんなときでも”手話通訳をという課題があるが、それは、ろうあ者から考えると「ろうあ者がどこへ行っても通訳要求が受けとめてもらえる」と言いかえることができる。
 このことを実現するためには、手話通訳体制を整備し、国の聴覚障害者施策の貧困な現状にメスを入れなくてはならない。

 

 京都府北端で、丹後六町と京都府の協力のもとで、京都ろうあセンターの通訳派遣事業に補助しての、広域にわたる複数の町在住のろうあ者要求に応える形態が実現した。これは、ひとつの前進例であるが、さらに広域行政にわたる手話通訳が、自治体通訳者設置という形で保障されることが望まれる。