手話を知らない人も
手話を学んでいる人もともに
{再編集投稿・1969年頃}京都における手話と手話通訳の遺産と研究・提議 佐瀬駿介
Iさん夫婦が丹精を尽くして創った着物の帯。
どんな人がこの帯を締めるのだろうか、と思うほどのまばゆい帯。
Iさん夫婦の織りの技術は高いことは聞いていたが、ここまでか、と感心した。
死ぬまで自分たちの織った帯を
「それで、この帯、自分で着物を着たとき締めることもあるの」
と聞いたとたん、Iさん夫婦が目を見張り、
「とてもとても買えるような値段ではない。」
「死ぬまで自分たちの織った帯を締めることはない。」
と言い切ったので驚いた。
「え!!買われへんの」「いくらするのこの帯」
と聞いて返ってきた答えは信じられ高価な値段だった。
「今がいい」「いらん、いらん」
自分たちが織ったものが永遠に自分たちのところに来ることはない、とは悲しいぁ、と言ったが、Iさん夫婦は手を振って
「いらん、いらん」
「今がいい」
と言う。
そんなものかなぁ、と思っていたが、後々になって戦前Iさんたちが結婚したいきさつを来たときは、それなりに納得しても、この世にこんなドラマなような話があるのか、と思えるはなしだった。