手話を知らない人も
手話を学んでいる人もともに
{再編集投稿・1969年頃}京都における手話と手話通訳の遺産と研究・提議 佐瀬駿介
障害児の親の会の市議会の陳情があった日のこと。
陳情が終わったお母さんたちが数人福祉事務所を訪れた。
ひとりのお母さんが、身体障害者手帳を示して
「この障害名の、先天性○○○という、先天性を消してほしい。」
と言われた。
こんな名前では
うちの子はお嫁に行けません
障害者手帳に先天性とあえて書く意味はないことは承知されていたが、
しかし、「あの‥‥‥福祉事務所で、その部分は変えられないんです。」
「医者が書いた名称で申請されて、京都府から手帳が交付されるからです。」「交付には審査があって……」
「こんな名前では、うちの子はお嫁に行けません。変えてください。」
お母さんは、泣いて激しく声を荒立てられた。周りのお母さんたちは、ハラハラして見ていた。
自分が原因でこの子を産んだことになる
というのが「先天性」
「障害名の変更は出来ますから、この変更書類とお医者さんの診断書をもらって……」
と言うとそれまでの恨み辛みをぶちまけるように、
「今すぐ変えてください!」
とお母さんは泣き続けた。
もう大変な騒ぎになって、お母さんの回りに人垣が出来た。
お母さんは自分が原因でこの子を産んだことになるというのが「先天性」であり、このことは遺伝する、と思われる。
娘が結婚ししようとしても「先天性」であったらまた障害児が生まれるから、と結婚を断られる。
だから、この文字は消してほしい、と何度も何度も泣くばかりだった。