手話 と 手話通訳

手話通訳の取り組みと研究からの伝承と教訓を提起。苦しい時代を生き抜いたろうあ者の人々から学んだことを忘れることなく。みなさんの投稿をぜひお寄せください。みなさんのご意見と投稿で『手話と手話通訳』がつくられてきています。過去と現在を考え、未来をともに語り合いましょう。 Let's talk together.

極めて不自然な手指や腕の動きを要求される指文字 念のため 思いを胸に 心に留める もし たとえば 仮に 京都の手話

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手話を知らない人も

     手話を学んでいる人もともに
  {新投稿}ー京都における手話研究1950年代以前の遺産と研究・提議 佐瀬駿介ー

 

 前回わいせつのところで触れたが、明石欣造さんは自分たちが平素使っている手話を余すところなく表現してくれ、撮影を許可してくれた。

 

 ところで、明石欣造さんは、現在使用されている指・数文字に対する強い不満を抱いていた。

 

 この指文字は、大阪市立聾唖学校の大曽根源助らがアメリカ式指文字を人為的につくったが、それは極めて不自然な手指や腕の動きを要求されるというのである。

 

 アメリカ式指文字は、斜め前に手指を変化させたが、大曽根源助らはアルファベットのアメリカ式指文字を手首曲げて縦方向に手指を動かすためから不自然な手指や腕の動きや腕肩手指の負担を増幅させて腕肩手指を痛めたからでもある。

 

 大曽根源助らがつくった斜め前に手指を変化させない指文字は、従来日本で使われていたカタカナ指文字であるとも教えられた。

 

 さらに大曽根源助らがつくったアメリカ式指文字で捨てられたものにTという指文字がある。

 

 このTは、巷でしばしば使われている性交を意味する猥褻なものであるので親指を立てた「た」に替えられたと言う。

 

 取捨選択された基準が、日本の手話を尊重しないで「輸入」し、自分たちで勝手に取捨選択されたことは認められない、という主張は、重みを増し続けた。


念のため。
思いを胸に。
心に留める。

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 念とは、心(注 腹)の中心にある思いということから、開いた手を胸にあてる時閉じて胸にしまい込むで、念のための手話。

 

もし。
たとえば。
仮に。

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 仮定を表す手話で、人差し指と親指を少し開いて頬に付けて人差し指と親指を付ける。

 

  これらの仮定形の手話は、抽象思考に欠かせない手話となっていく。

 

 このもしの手話は、もう一つの手話と組み合わせられるが、省略されている。

 

性sex 手話 生き抜いた愛をみごとに表現 ほれる(惚れる) だま(騙)される ねたむ(妬む) 猥褻 性交 同衾 交合 

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手話を知らない人も

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  {新投稿}ー京都における手話研究1950年代以前の遺産と研究・提議 佐瀬駿介ー

 

ほれる。
騙される。

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 初めてこの手話を知った時に大変驚いた。

 

  惚れると騙される、は同じ手話だと言うからである。 

 

 恋するという手話は別にある。

 

 顎が外れる・ぽかーんとするで惚れるの手話。
 
   惚れるの意味の、ぼんやりする、放心する、意味を表した手話である。

 

 ところが、騙されるとの同一だ、とも言うろうあ者がいた。惚れるのは騙されるからだ、とまで言う。

 

 ともかく、ぼんやり、放心した、心奪われた場合は、スキが出来るので騙されやすい、というのかも知れないが京都に伝わる手話には、それまでのろうあ者の人生が裏腹に表現されている。

 

ねたむ。

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  妬む、嫉むの漢字表記から来ていると思われるが、鼻を手のひらで左右に少し動かして「ねたむ」の手話。


猥褻、
性交。
同衾。
交合。

 

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 伊東雋祐氏は、この手話をわいせつ・猥褻とすらりとすり抜けて書いてた。ところが、実際は、性交、同衾、交合などの手話である。このことでどんな意見のやりとりがあったか省略する。

 

 いわゆる手話の猥談でしばしば出てきた表現である。

 

 右拳をホッペタに当てて、同時に左側のホッペタを膨らませる手話。

 

 男性器が、女性器に入った時の様子を手話で表したと説明されてきた。

 

  性交中に「膣内に空気が入る、それが出るときに音が鳴る」その音が、口に空気をためて、ほっぺをつついたら「ブー」と鳴るの同じということでも表現された手話でもある。

 

 ろうあ者は、音が全く聞こえないとか決めつけないで、考えればこういうことは理解出来るが、こういう手話はすべてわいせつな手話とされた。

 

 アメリカで出版されている性に関するイラストで描かれた手話を十数年前に見て、日本でわいせつな手話とされてきた手話とほとんど同じだった。

 

 一つの時代が、わいせつとし、また一つの時代が性用語の手話としている。

 

 

肖像画からとりいれた手話 できない 縛られて どうしようもない もったいない 損した 恥 名誉 誉れ 京都の手話

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  {新投稿}ー京都における手話研究1950年代以前の遺産と研究・提議 佐瀬駿介ー
 

  できない。
 縛られて。
 どうしようもない。

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 まさに手首が縛られた様子で。身動きとれないという手話。

 

解放される、の項を参照。

 

  もったいない。
 損した。

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  両手でお金(丸)を示し、それを捨てる動作でもったいないの手話。

 

 金を捨てる=もったいない。逆の手話をすると=得する・儲かるの手話となる。


恥。

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話した人差し指で顔にあてる、顔が傷つくという手話。

 

顔が傷つく、即ち他の人に隠しようもない面目などを示す手話と言える。

 

名誉。
誉れ。

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  人差し指を楕円形に動かし肩まで付ける。

 

  将官などの飾緒を手話表現したとも言われているが、飾られた将官などの装飾から取り入れた手話も多い。

 

 例えば、特別の手話。一般の兵士と違い軍服の袖襟の縫い込みで表したりされた。

 

 これら肖像画からとりいれた手話は、戦前の歴代天皇肖像画の髪型を手話で表したことと同じである。

 

 飾緒は、名誉の象徴と魅入った事からも来る手話表現。

 

 その大きさによって名誉の大きさを表現している。

制限なき手話 自由に表現される手話 決められただけの手話では生きた手話とはならない 人差し指(話)が耳に 入ってくる 方向 一直線に入る話 多くの話が入る など多様に手話で表現される 珍しい 有名 面倒 めんどくさい やっかい 京都の手話

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  {新投稿}ー京都における手話研究1950年代以前の遺産と研究・提議 佐瀬駿介ー


珍しい。

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 珍しい、の手話は、普通とは違って「目新しい」、の意味を捉えて、眼・新しい、で目新しい=珍しいと手話表現している。

 
有名。

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  有名とは、「広く知られていること」の意味でもあり、人差し指(話をも意味する)が耳に入ってくるという手話で有名と表現している。

 耳に入ってくるとは、聞こえないろうあ者に聞えるはずがないから耳から入るという手話はあり得ないという意見がある。でも、それは決めつけだろう、聞える、伝わる、などのことは眼だけでなく耳からも、と聞こえる人と共通する手話表現をする。人みな平等ということが手話表現で見受けられる。

 聞えない、ということを「制限」されているとは考えないで無制限で自由な手話表現が見られる。

 

面倒。
めんどくさい。
やっかい。

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 顔・面・顔面と倒を組み合わせて面倒の手話。

 

 漢字の組み合わせて表現もしているが。

 

  面倒、困ったなどの場合は、目尻を叩くと気持ちがほぐれてリラックス出来る日常的に人々が意識する、しないにもかかわらずしている動作を取り入れている。

 

 このことから、リラックス出来ない困難さを表現した手話とも考えることも出来る。

 

日本語の奥深い意味合いを巧みに取り入れて自分たちの手話を創りあげた しっかり 意志を固める 腹を固める 迷惑 未熟 まだまだ なんなんですか なぁーに!! どうして 京都の手話

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手話を知らない人も

                 手話を学んでいる人もともに
  {新投稿}ー京都における手話研究1950年代以前の遺産と研究・提議 佐瀬駿介ー

 

  しっかり。
 意志を固める。
  腹を固める。

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  すでに書いてきたが、こころ、気持ちなどは、腹で表されている。これは日本語では、腹を固める、なども言われる事から来る。

 

 しっかりは、人差し指と中指を曲げて肩から腹の真ん中あたりまで動かして、固める、腹を固める、しっかり、意志を固めるとなり、ものが固まる事と区別している手話。

 

 腹を固めた、という方が適切かもお知れない。

 

 迷惑。

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 迷惑は、よくない意味を示す不都合などの意味で意味に使われている。

 

もともとは、迷は本当の道にまようこと、惑は途方にくれてとまどうことを意味している。

 

 この言葉は、迷いとまどう、という仏教語ことからかなり以前から、「やっかいな目にあって困る」などのことも含めて「眼が閉ざされて」 迷う手話表現がされた。

 

 「迷惑」迷惑かけましたすみません。

 

 などの場合に手話が使われ、他人の迷惑行為を表されなかった。


未熟。
まだまだ。

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 未熟とは、技術・教養などが熟練していないことの意味を持つので、腕を手のひらで下に動かし=腕 右手を横にして、左手を上下に動かして、終わりに達していない=まだまだ、熟していない、終了していないでを合わせて未熟。

 

 伝統産業に就くろうあ者達が、親方からよく言われたことであるが、この手話も京都ではよく使われた。

 

 特、右の写真のまだまだ、は頻繁に使われた。

 

  なんなんですか。
 なぁーに!!。
 どうして。

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 この手話もまた他の人々が物をたずねたりする時に使われたも身振り表現と同じである。

 

 指さす場合もあるが、手を差し伸べる、は、相手の方へ手を伸ばす動作や様子を表す言い回しで、「助ける」といった意味で使われるが、この場合は、表情で手話の意味が変わる。

 

 不可思議な顔をしているので、なにか?教えて欲しい=援助して欲しいという意味合いになる。

 

 繰り替えし書くが、手話は唯一の意味合いではない。単純化して理解出来ない。ろうあ者が日本語の奥深い意味合いを巧みに取り入れてより自分たちの手話表現を創り上げてきた。

 

 日本語と別立てに成立したものではない。

 

 手話は日本語と別物とする考えは、ろうあ者が日本語の奥深い意味合いを巧みに取り入れてより自分たちの手話表現を創り上げてきたことを全面否定することであり、ろうあ者の創造的適応能力を否定するものでしかない。

 

 

悩んでいたことが吹っ切れた喜びの瞬間 厚かましい 明るい 明るくなった 先が見えた  熱い あつっ ほとんど 大体 京都の手話

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手話を知らない人も

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厚かましい。

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 顔の面が厚い(親指と人差し指を閉じて頬につけ、開く。厚さを表現する。)で厚かましいの手話。

 

 厚かましい=面の皮が厚い

 

 この手話を初めて知った時に感動したのを覚えている。


明るい。
明るくなった。
先が見えた。

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 閉じた(親指と人差し指を閉じて)両目の目頭が、開いて(親指と人差し指を開いて)、眼の前が闇から明るくなる手話。

 

 夜が明けるという意味ではなく、考えに行き詰まっていたことが、そうではなくなったことで使われる手話。

 

 先が見えたぞ、などの場合によく使われた。

 

 左の写真だけでは「悩むの手話」。それが吹っ切れた喜びの瞬間を表現している。

 

熱い。
あつっ。

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 熱い湯に手を入れた瞬間、人は手を引き上げるがまさにその瞬間で「熱い」を表現す

る手話。

 

 暑い、という手話があるが、熱風や灼熱の日などでもこの手話が使われた。

 

ほとんど。
大体。

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 顔から両手で円を描いて両手が付けば全部の手話。完全の手話。

 

 だが、両手で円を描切れていないのでほとんど、大体の手話となる。

 

ことばは身振りや手振りからうまれたので手話も同じ動作がある うまい おいしい まずい 忙しい ひまがない 危ない びっくり ショック 新しい さら いけない 駄目 京都の手話

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  うまい。
  おいしい。

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 この「うまい」は、食べ物のうまい、おいしいの意味で「涎」などを拭く様子から生じた手話とされている。

 

 左から右まで顎の下をくるりと曲げて、手を下ろすとおいしかったの手話となる。

 


まずい。

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 この手話も食べ物の場合などの「まずい」の手話で、「うまい」という手の動きを顎から捨て去る動作でまずいという手話。

 

忙しい。
ひまがない。

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 「ひま」の手話は、両手のひらを膝に置くが、そんな瞬間もないというような動きで

手のひらを平らにして交互に上下する手話。

 

 あちこちと動き回る様子を表した手話。

 

  危ない。
 びっくりした。
 ショック。

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 危ないの手話は、「危」のしゃがみ込むという意味からも来ているが、ビックした時によくやる動作と同じ手話。

 

 両手を胸に突然突きつけると、ショックとか非常に驚いたとかの手話になる。

 

 ゆっくりと同じ動作を繰り返して、場所を指さすと「危ない場所」とかの意味になる。

 

 これらの動きも微妙であるが、これもまた見る側からすると相手の臨場感が伝わり、感情を共有化出来る。

 

新しい。
さら。

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  両手の閉じた手を自分に向かって開くことで新しいという手話。

 

ぴっかぴか、など光り輝くことで新しいという意味で使われるが、手話も同じであるし、その事からも手話表現が取り入れられたと考えられている。

 

いけない。
駄目。

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 だめですよと通常使われる手の動きそのもの手話。

 

 外国の身振りや手振りでも同じ動作があるが、この場合は、鼻に指先をあてて鼻が折れる、から、鼻が折れるから‥‥‥という意味もあると説明されたことがある。

 

 自信をなくす、自分を見失う、などの意味合いを込めていると考えられる。