手話 と 手話通訳

手話通訳の取り組みと研究からの伝承と教訓を提起。苦しい時代を生き抜いたろうあ者の人々から学んだことを忘れることなく。みなさんの投稿をぜひお寄せください。みなさんのご意見と投稿で『手話と手話通訳』がつくられてきています。過去と現在を考え、未来をともに語り合いましょう。 Let's talk together.

手話 巧みな表現の背景を踏まえてこそ 申し込む 安い 目的 休み 問題 有名 要求 恋愛 夜 練習 利子 わがまま

京都の 手話 の手引き 1960年代検討されて作成 資料13

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 手話には、歴史的経緯や時代の特徴、感情表現など複雑極まりない表現を織り交ぜている。

 

 それゆえ、この手話はこのことから断定できないものがほとんどである。断定できるほど「短絡的に表現」(決して特定の人々がつくって、標準だとか言って手話表現を画一化出来ないが故に変幻自在な表現が出来るのである。この真髄を先ず理解していただきたい。)

 ただ、テキストがつくられたときに説明された事をすこし参考としてのべる。

 

恋愛 人間が恋に落ちる。人差し指は、二人。ふたつがひとつになっる恋を表現している。イラストでは、腹のあたりから表現されているが、恋の程度によってその位置と人差し指のクロス状況と動きが加えられていく。

 このクロスから後年、ハートマークを画いたものであるとする誤解が広げられているが、時代考証されない考えである。ハートマークがさかんに広げられる時代は、ずーっと後のことである。

 深く切り離せない恋は、胸のあたりから下方へと一体化する。この恋、破れそうだと(恋が破れる。失恋するは、下方で一体となった指を恋愛と逆の方向に動かす。)日本の人差し指は、交じり合う手前で止められたり、クロスするなどの方法で表現される。この恋愛は、人生にとってとても細やかな人間模様であるように手話もまったく同じように表現される。

要求 イラストでは、手を差し伸べて出す表現で表されているが、お上に文を添えてねがう動きなども織り込まれている。が、しかし、要求を突きつけるという仕種も内包している。時代とともに手話「欲しい」と組み合わされて二動作で「要求」と表されるようになっていく。

安い お金を下方に動かして「安い」。逆に上方に動かすと「高い」となる。この基準は、自分たちの生活基準線で決まる。

申し込む 要求と同じ動きで表現されるが、イラストでは手の平と手の甲に入れ替わっている。即ち、申し込んでいることは、手の甲で隠されているので「内緒」で申し込むともとれるが、手の甲で「包む」ため大切な、大事な申し込みともとれる。申し込む側の心情を微妙に表現することができる。

 

練習 学校で「鍛錬」の授業の時の動きを表していたとする意見がある。拳で胸を打ち付けて「心身」を鍛えると言うことでもあり、練習という意味でもある。が、これらの思い出が多い人々は、決してうれしい顔で手話表現しなかった。苦しい、哀しい表現と合わさって練習、訓練という手話表現がされていた。

 

 目の前が次第に塞がれていく⇔暗くなるで、夜。逆な動きで昼。その手の動きと位置で朝焼け、夕焼けが表現された。

 

休み この手話については、戦前の漢字やろう学校教育の事を調べないと解らない。日常的に使われていたので多くろうあ者にその成り立ちを聞いて確かめるべきだった。握り拳を手の平に置く手話から、「気張っていた‥‥‥」ことを掌(たなごころ)におく、掌で包むことで「休む」(身体を休める)などの意味が籠められていたようにも思われる。唇に指をおいて「赤」と「休み」を組み合わせて日曜日としたのは、戦後になるだろう。それまでは手の平を旗に見立てて親指でクロスさせてふたつの旗が掲げられる祝日などが休日と表現されていたこともある。🎌。

目的 拳を横にしてうえの円になった部分を「的」に見立てて、その的に人差し指を当てる。目的を達したら人差し指は、的に。そうでない場合は、人差し指の位置で目的にむかうさまを表した。手話は、手の位置、方向、動き、形態などで微細な表現がされるのでただ単に手を動かせればいいとはならない。

わがまま 自己中心で人のことを思わず振る舞うことで、鼻(自分)をツンツンする手話。鼻を自分と手話で表現されることは無くなっているが、鼻高々、のことばのように鼻を「高くするような動き」を繰り返すことでわがままを表現するが、鼻高々と威張る人を逆に皮肉っている手話としても興味深い。 

利子 利益は手の平にお金ががっぽり入ってくるが、利子はそうではなく指でなぞるほど少ないという生活観からも生じている手話。これっぽっちというあきれた表情と共に表されることが多い。漢字に由来する手話も多いが生活観からくる手話として大切にしたい。

有名 耳にどんどん入ってくることから有名の手話。聴くのではない聞くが分けられて表現されている。よく聴く、たくさん聴きたいなどは耳に手をラッパ状にして「聴く」を現すことから、この場合は自然に入ってくることから有名と手話表現している。

問題 漢字の一部をとり入れた手話。これらの手話は無数にある。そのとり入れ方はじつにみごとである。問題の「門」の部分を両手のつまみを左右に動かし形作る。これら漢字の特徴的な一部をとり入れて現す手話は多いが、抽出のみごとさから学ぶことが多い。文字を知らないろうあ者が、これらの手話から文字を覚えて行ったことを思うと、巧みな手話と言える。