ある聴覚障害者との書簡 1993年 寄稿
道路拡張にともなう住民説明会 ①
とても心配していることと手話通訳の話
手話の相づち、と関連して、とても大切な手紙ありがとう。
道路拡張にともなう住民説明会。
ろうあ協会の3人のかたと親しくなっていて、あなたがとても心配していることと手話通訳の話の手紙。
充分考えて返事しますが、このことではあなたの方がはるか先を見据えて考え、取り組んでいるように思います。
ろうあ者の仲間を裂く生活環境
道路拡張で立ち退きを迫られたAさん。
みんなから良い条件の立ち退きと言われてもろうあ者の仲間と離れた生活は嫌だ、と言いつづけるのはわがままでないです。役所がそのような噂を流しているのはよくないですね。
ろうあ者の人びとにとって人間関係が寸断される生活環境はのは「よい条件」とは替えられません。
突然 大騒ぎになった住民説明会
Bさんは、道路が拡張されると家の前が道路になる。危険になるから嫌だと言うのは当然のことですね。
Cさんは、道路拡張には直接影響しないけれど。AさんやBさんと離ればなれになるのは悲しいし、二人の言っていることは理解出来る。すべてその通だ、と言いつづけている。
そんな三人が、そろって道路拡張にともなう住民説明会に参加したんですね。
役所は、手話通訳の人に頼んでいてくれたので役所の説明はそれなりに知ることが出来た。
なに、なにをみんなは言っているの?
私は役所の通訳をするだけ
けれど、突然、会場が大騒ぎになったので何があったのか解らないので、手話通訳の人に
「なに、なにをみんなは言っているの?」
と聞いたけれど
「私は役所の通訳をするだけ、来ているかたの通訳はしません。」
って言ったとのこと。
同じ地域住民として こころを通わせよう
それに納得できない三人は、隣に座っている人に「怒っているの?」と書いたメモを渡したら、役所は質問しても答えない、同じことを繰り返して言う、納得なんかできない、などのメモがたくさん渡された。
このことは、同じ地域住民としての当然のことですが、こころを通わせようとする動きとしてあなたは見ていますね。
それが、住民説明会の後で参加した人から手話を覚えたいとう依頼が来たことをとても喜んでいたことが手紙から伝わってきました。
手話通訳の人が「手話をやめなさい」
ところが、みんなに気持ちと一緒なのでろうあ協会の3人が、そうだそうだ、おんなじことばかり言っている、私も困る、そんな計画なら反対と手話をしたら、手話通訳の人が「手話をやめなさい」「ここは役所の説明会です」と言いはじめた。
このことをとても怒っているあなたの気持ちは充分わかります。
役所の話だけ聞くのが、住民説明会なの、住民の意見を聞いてこそ住民説明会では、なぜろうあ者の人の意見(手話)を止めさせるの、という意見はその通だと思います。
残念ながら、役所に呼ばれたから役所の言っていることを手話通訳するという考えはあります。
あんなことは通訳しないでください
もちろん、私はそんなことをしません。
何度も行政から手話通訳の依頼を受けたが、行政の説明会の途中でも手をあげて手話で質問があれば、手話通訳しました。
あとで、行政の担当者が来て「あんなことは通訳しないでください」と言ってきました。そこで「手話通訳の私に言ってくるのはおかしいです。直接本人に言うべきじゃないですか。」「説明会には、質問や意見の時間って無かったのでは」と言うと行政の担当者は、黙って帰りました。
行政に呼ばれたから、行政の「都合」のいいことだけの手話通訳はゼツタイしませんでしたが。