手話 と 手話通訳

手話通訳の取り組みと研究からの伝承と教訓を提起。苦しい時代を生き抜いたろうあ者の人々から学んだことを忘れることなく。みなさんの投稿をぜひお寄せください。みなさんのご意見と投稿で『手話と手話通訳』がつくられてきています。過去と現在を考え、未来をともに語り合いましょう。 Let's talk together.

「罪なき罪」と黙秘権の通告 ろう学校教師の手話通訳

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       村上中正氏の聴覚障害者教育試論 1971年を思惟

 

  「多数決で決めるのではなくみんなが一致しする」の基礎条件について考える。

 

  「罪なき罪」と黙秘権の通告

 

 村上中正氏の1971年試論で、
3,手話サークルみみずく会手話通訳団会議(以下通訳団会議)では「黙秘権」「黙秘通告」のことが議題にあがっていた。
 ろうあ者が逮捕され取り調べを受ける時にそれまで手話通訳はほとんど呼ばれなかった。そこで通訳団会議としても取り調べ時に手話通訳を付けるように警察、検察に要求するとともに裁判所にも申し入れていた。
 逮捕されるろうあ者の多くは学校に行っていない人が多く、「罪なき罪」に陥れられることが多く、手話通訳が付けられるようになると警察、検察も態度を変えてきた。
 そこで一番問題になったのは、黙秘権の通告であった。

 

黙秘権の通告を
 どのように手話通訳するか

 

4,黙秘権の通告をどのように手話通訳するか、が通訳団会議で話し合われた。
  黙秘権は、憲法38条の国民の権利として「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」とされ刑事訴訟法訴訟法で「取調に際しては、被疑者に対し、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない。」されていた。
 しかし、警察などでは黙秘権の告知の言い方はさまざまで「あなたには黙秘権がありますので、自分の不利になることは無理に言わなくても構いません」と言ったりするのはまれで「黙秘権がある。」だけで終わったり、取り調べに答えるように言いながら、「言わなくてもいい」と言ったりすることがあった。

 

緊張感がほぐれたろうあ者は
  手話通訳者にすべてを話したりするが

 

 この黙秘権の告知の言い回しは独特で、警察などで言うことをそのまま手話通訳したら結果的に取り調べに答えなければならないという意味になったりする。
 さらに手話通訳が来てくれたことで、今までの緊張感がほぐれたろうあ者は警官ではなく手話通訳者にすべてを話したりする。そのため「自白」することになったりする。

 

  ろう学校の教師が
 警察などの取り調べの手話通訳をするが

 

  「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」

 

  「自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げな ければならない。」

 

  「あなたには黙秘権がありますので、自分の不利になることは無理に言わなくても構いません」

 

などの手話通訳は、容易に思えてもじつに難しい問題があると書いている。

 

 村上中正氏らは1960年代、これらの問題のを手話通訳者が集まって討論している。

 

 当時の記録を読むとろう学校の教師が、警察などの取り調べの手話通訳をすることが多かったとされている。

 

  ろう学校の教師
   警察、検察、裁判まで手話通訳

 

 ろう学校の卒業生が、警察などの取り調べを受けるときに、ろう学校の教師が手話通訳をする。

 

 そのため警察での取り調べであっても手話通訳に「すべてを」話してしまうことが多いと村上中正氏らは指摘する。

 

 人間を媒介とするコミュニケーションの問題の本質に迫る問題であった。

 

 問題が出された当時の京都では、ろう学校の教師以外に手話通訳者がいた。

 だが、他府県では、ろう学校の教師が警察の取り調べ、検察の尋問、裁判までろう学校の教師がひとりで手話通訳をしていたとのこと。

 

 いくら教師が、誠実に手話通訳を行なったとしても、黙秘権の行使が出来るか、と言う問題をろう学校の教師を含めた手話通訳者の中で話し合われたのである。